第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回となる今回はライセンスの運用方法のお話
今回の範囲は交付規則第8条、第24条~第27条。
今回も文章で見るよりは画像の方が分かりやすいと思います…ちょっと長いかも。
FIB、AB、CLA、LMなどの専門用語は前回参照。
MOKUJI
第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
前半はまず制裁のお話。
制裁の具体的内容は交付規則第8条第1項に定められています。
第 8 条 〔ライセンス制度上の制裁〕
(1) ライセンシーまたはライセンス申請者にB等級基準の未充足があった場合、当該ライセンシーまたはライセンス申請者はFIBまたはABにより以下の制裁(ただし、当該制裁は網羅的なものではない)が科される可能性がある。ライセンシーまたはライセンス申請者は、シーズンの開始前のみならず、シーズン中にも、制裁が科されることがある。
① 戒告
② けん責
③ ライセンス基準を満たすための期限延長
④ 特定の期限までにライセンス基準を満たす義務
⑤ 罰金(1 億円を上限とする)
⑥ 勝点の減点(15 点を上限とする)
⑦ 人員の停職
⑧ ライセンサーの然るべき機関への問題報告
⑨ 保証および引受義務
⑩ 補助金/賞金の保留
⑪ より詳細な財務情報の要求
⑫ 無観客試合
⑬ 収容人数の削減
⑭ Jライセンスの見直し・取消し
⑮ Jライセンスの保留
⑯ 移籍契約締結の禁止
⑰ 下位ディビジョンへの降格
注意すべきは「B等級基準の未充足があった場合制裁が科される可能性がある」という表現。
仮にB等級基準を満たしていなくても制裁がないことがあるということですね。
前回、A等級基準を満たさなければライセンスが交付されないという条文を読みましたが、B等級は割と柔軟なようです。
以前、大宮が観客数水増しで制裁を科されたときの根拠はJリーグ規約第148条第1項。
Jリーグ規約
《Jリーグ公式 2012年7月13日閲覧》
第142条〔制裁の種類〕
(1) Jクラブに対する制裁の種類は次のとおりとし、これらの制裁を併科することができる。
① けん責 始末書をとり、将来を戒める
② 制裁金 1件につき1億円以下の制裁金を科す
③ 勝点減 リーグ戦の勝点を1件につき15点を限度として減ずる
④ 出場権剥奪 リーグカップ戦における違反行為に対する制裁として次年度のリーグカップ戦への出場権を剥奪する
⑤ 除名 Jリーグから除名する(ただし、総会において正会員現在数の4分の3以上の多数による議決を要する)
これを見ると制裁の幅がかなり広くなってるなと感じますね。
特に、「⑦人員の停職」、「⑫無観客試合」、「⑯移籍契約締結の禁止」、「⑰下位ディビジョンへの降格」の4つについては大きな追加ではないでしょうか。
「③ライセンス基準を満たすための期限延長」って制裁なの?とか、「⑬収容人数の削減」って何?とかよく分からない制裁もあるんですがまぁいいでしょう。
(観戦客の数に制限をかけるってことでしょうか・・・ちょっと不明です)
第 23 条 〔ライセンスの有効期間 / 取消し〕
(3) ライセンシーが以下のいずれかに該当する事態となった場合には、当該ライセンシーは、FIBまたはABの決定により、Jライセンスを取り消されまたは制裁を科され得る。
① 当該ライセンシーが本交付規則に定めるライセンス基準を満たさない状況となり、短期的な回復が見込めなくなった場合
② 当該ライセンシーまたは第三者が当該ライセンシーについて破産、特別清算、民事再生または会社更生の申立てを行ったとき
③ 当該ライセンシーが解散、合併、会社分割または営業の全部もしくは重要な一部の譲渡を決議したとき
④ Jリーグ定款に基づきライセンシーが除名処分となったとき
シーズン中に制裁が科されうるという話は前回扱った交付規則第23条第3項の話。
あと、第1号は短期的な回復が見込めるならどうにかなるって話なのでしょう。
続いて実際にこのルールをどのように運用していくか。
交付規則第24条の第1項~第3項を見てみましょう。
第 24 条〔ライセンス申請〕
(1) 第 18 条に定められたクラブのみが、Jライセンスの交付を申請することができる。
(2) Jライセンスの交付の申請は撤回することができない。
(3) Jライセンスの申請から交付までの手続きは、本交付規則別表 1「Jリーグクラブライセンス交付スケジュール」に従う。
「第18条に定められたクラブ」というのは前回触れたようにJ1・J2・準加盟のこと。
また、交付申請が撤回できないというのは後述する話と対比で見れます。
で、第3項にある交付規則別表1にこんなフローチャートが載っていました。
《Jリーグクラブライセンス交付規則 38頁より》
しかし、これだと分かりにくい。簡略化した図が下になります。
ここでいう「申請者」とはライセンス申請者のこと。
「ライセンス・パッケージ」とは「Jライセンス申請の案内とライセンス申請書類の一式」(交付規則第24条第5項)のことになります。
FIB決定までの流れは大体イメージがつくと思いますので上訴について軽く触れておきます。
そもそも誰が上訴できるのかというのは交付規則第26条第2項。
第 26 条〔FIBによる決定〕
(2) FIBの決定に対しては、以下の者が上訴権を有する。
① Jライセンスの交付拒絶の決定を受けた場合におけるライセンス申請者
② 制裁付きでJライセンスの交付を受けた場合におけるライセンス申請者
③ Jライセンスの剥奪の決定を受けた場合におけるライセンシー
④ Jライセンスの交付の決定がなされた場合におけるLM
第1号~第3号まではいいのですが、第4号にあるようにLMが上訴できる点は注意。
また、交付規則第27条で注目するべきは以下の3点でしょうか。
第 27 条〔上訴〕
(3) CLAは、審問期日終了後、ABによるクラブライセンス決定会議を開催する。ABは、ライセンス申請者に対するJライセンス交付の可否、制裁の有無・内容について、上訴申立受理日から 30 日以内に決定する。なお、ABの決定は、FIBの決定より上訴人に不利益なものであってはならない。ただし、LMとライセンス申請者またはライセンシーの双方が上訴している場合はこの限りでない。
(5) 上訴の申立てはいつでも取り下げることができる。上訴の申立てを取り下げた場合は、その時点でFIBの決定が確定するものとする。
(6) ライセンス申請者がABに上訴する場合は、上訴手数料として金 10 万円をJリーグに支払うものとし、当該手数料はいかなる理由があっても返却しない。
第5項にあるように、上訴は交付申請と異なり撤回が可能です。
上訴には10万円かかる一方で、「なお、ABの決定は、FIBの決定より上訴人に不利益なものであってはならない」という文言で上訴のリスクが結構軽減されているのでは。
以上が今回のライセンスの運用方法のお話でした。
そしてようやく次回から実際の基準とは何があるのかについて触れていきたいと思います。
やっとオードブルが終わったよ。