第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
今回から、ついにクラブライセンス制度の本題=各種基準に入ります。
第5回は、施設基準のお話。範囲は交付規則第34条です。
MOKUJI
第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
施設基準(Infrastructure Criteria)の目的は、交付規則第34条第1項。
第 34 条〔施設基準〕
(1) 施設基準の目的は、以下のとおりである。
① ライセンス申請者が各競技会を開催可能な、安全で快適なスタジアムを有すること
② ライセンス申請者が所属選手の技術的スキルの向上に役立つ、適切なトレーニング施設を有すること
スタジアム要件だけでなくトレーニング施設についても定められてる点は注意。
- I.01 A等級 公認スタジアム
- I.02 A等級 スタジアムの認可
- I.03 A等級 スタジアム:入場可能数
- I.04 A等級 スタジアム:運営本部室および警察・消防司令室
- I.05 A等級 スタジアム:観客エリア
- I.06 A等級 スタジアム:医務室・救護室
- I.07 A等級 スタジアム:安全性
- I.08 A等級 スタジアム:承認された避難計画
- I.09 A等級 トレーニング施設
- I.10 A等級 アカデミーのトレーニング施設
- I.11 B等級 スタジアム:基本原則
- I.12 B等級 スタジアム:衛生施設(※一部C等級)
- I.13 B等級 スタジアム:屋根(※一部C等級)
- I.14 C等級 スタジアム:案内サインと動線
- I.15 C等級 スタジアム:車椅子席
以上が施設基準の全15項目。
そもそも、スタジアム要件ってのはあちこちで定められています。
I.01 公認スタジアム(A等級)
(2) 前項のスタジアムは、日本国内にあって、JFAおよびJリーグに公認されており、Jリーグ規約に定める要件を満たしていなければならない。ただし、当該スタジアムがAFCクラブ競技会の会場として使用可能か否かを決める権限はAFCが留保する。
上記されているように、Jリーグ規約第4章第1節で定められている*1他に、Jリーグのスタジアム検査要項*2、JFAが公開しているサッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドラインと国民体育大会 サッカー競技 施設ガイドライン 第6版の3カ所で確認しています。
加えてAFCの方でもGeneral Stadium Regulationsなどでも触れられていますね*3。
この中で熟読すべきは、Jリーグのスタジアム検査要項でしょうか。
これは2010年に大幅な改定が行われており、それが今年も使用されているようです(多分)。
2010年第170号のJリーグニュース
《Jリーグ.jp 2010年5月30日》
Jリーグ スタジアム検査要項[2010年度]
Jリーグは2月22日に「Jリーグ スタジアム検査要項」改定について公表した(Jリーグニュース169号で既報)。今回の改定は、プロスポーツにふさわしい「スタジアム」の追求、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)基準の充足、2012年より審査導入予定のクラブライセンス制度とのリンク、10年後の目指すべきスタジアム像などを狙いとしている。検査項目は2009年度の68から182へ増えた。
ただ、これらの規定との整合性を確かめようと思うとかなり時間がかかるのでやっていません。
なので気になったところだけピックアップしてみます。
I.03 スタジアム:入場可能数(A等級)
(1) スタジアムは、Jリーグ規約に定める算定方法 により、以下の人数が入場可能でなければならない。① J1クラブ主管公式試合:15,000 人以上② J2クラブ主管公式試合:10,000 人以上
(2) 当該スタジアムが前項第 2 号のみを充足する場合には、J1クラブライセンスは交付されないものとする。
I.03の第1項はJリーグ規約第29条でも定められている事項で、Jリーグのスタジアムとしてはかなり基本的な要件になります。
ただ、今回の規定によりかなり厳格に扱われるという話は出ていますが*4。
第2項の話は、前々回取り上げたJ1クラブライセンスとJ2クラブライセンスの違いの一つ。
I.05 スタジアム:観客エリア(A等級)スタジアム内の各スタンドは、異なるセクターに分離することができるようにしなければならない。
I.07 スタジアム:安全性(A等級)
(2) ライセンス申請者はスタジアム所有者と協力のうえ、スタジアムが次の各号の内容を満たすよう努めなければならない。② 観客エリア内のすべての一般用通路および階段を、明るい色で塗装すること(例:黄色)。なお、観客エリアから競技エリアへ移動するためのゲート、およびスタジアムの外へ移動するための出口となるすべての扉やゲートについても含まれる
前述したとおり、他の規定まで読み込んでいませんが、これらは見たことがなかったような。
特に安全性についての基準は8項目にわたっており、力を入れているのが分かります。
I.09 トレーニング施設(A等級)
(1) ライセンス申請者は、年間を通じてトレーニングに利用できる以下の施設を有していなければならない。① 常時使用できる天然芝もしくは人工芝のピッチ 1 面および屋内トレーニング施設② クラブハウス③ メディカルルーム
トレーニング施設についての規定はトップ・ユース(I.10)で共通。
ただ、今までトレーニング施設についてのきっちりした基準はなかった気がします(自信は無い)。
練習場がないなんて事態*5も発生しなくなることでしょう。
I.12 スタジアム:衛生施設(B等級/C等級)
(1) スタンドには、どの席からもアクセス可能な場所に、男女別のトイレ設備を十分に備え、かつ、車椅子席の近くには、多目的トイレを備えなければならない。
(2) トイレは、明るく、清潔で、衛生的でなければならず、試合中もその状態を保たなければならない。
(3)スタジアムは、1,000 名の観客に対し、少なくとも洋式トイレ 5台、男性用小便器 8 台を備えなければならない。
(4) 前項にかかわらず、Jリーグでは、1,000 名の男性観客に対し、少なくとも洋式トイレ 3 室、男性用小便器 15 台および洗面台 6台、また、1,000 名の女性観客に対し、少なくとも洋式トイレ28 室、洗面台 14 台を備え、5,000 人の観客に対して多目的トイレ 1 室を備えることが望ましい。
I.13 スタジアム:屋根(B等級/C等級)
(1) スタジアムの屋根は、観客席の 3 分の 1 以上が覆われていることが推奨される。
(2) 前項にかかわらず、スタジアムの屋根は、すべての観客席を覆うことが望ましい。
上記2つは各種基準の中でもB等級とC等級が混ざった特殊なケース。
I.12は第4項が、I.13は第2項がC等級で、その他はB等級となっています。
C等級は「望ましい」という言い回しになっているので分かりやすいですね。
前者はともかく多くのクラブにとって問題となるのはスタジアムの屋根でしょう。
屋根はA等級の基準ではないため、制裁覚悟のクラブも多いかもしれません。
Jリーグ側の柔軟な対応も必要ですね。
以上が各種基準の前半でした。
今回扱わなかったもの以外でも、警察・消防司令室や医務室の規定もあったり。
全体の中でも重要な基準の一つとなっていることが窺えます。
次回はちょっと時間が空くと思います。
引き続きよろしくお願いします。