第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
ちょっと間が空きましたが、今回はライセンスの意義(後編)のお話。
そして、全9回になることが確実に。
更には先日の報道でクラブライセンス制度が注目される気がします。
全Jクラブが「クラブライセンス制度」申請届け出
《スポーツ報知 2012年7月3日付》
Jリーグは3日、2013年からの「クラブライセンス制度」の導入に伴い、Jリーグの全40クラブとJリーグ準加盟で現在は日本フットボールリーグ(JFL)のカマタマーレ讃岐、V・ファーレン長崎からライセンス申請が出されたことを明らかにした。6月30日は提出期限だった。
同制度では競技、施設、人事組織、法務、財務と五つの基準を設け、満たさなければライセンスが交付されず、リーグに参加できない。今後はJリーグが任命する弁護士、公認会計士らで構成する審査機関が審査し、ライセンス交付の可否を9月までに決める。
今回の範囲は交付規則第10条~第23条。
上記記事の最後の文章にかかるところです。
文章にするとだらだら長いだけなので画像も使っていきます。
MOKUJI
第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回で用語解説を扱う予定ですが、分かりやすくするために簡単な説明をしておきましょう。
クラブライセンス制度に関わる人・機関は大きく分けて5つ存在します。
まず、第一にライセンスの取得を目指す「ライセンス申請者」。
ライセンス申請者に関する定義は交付規則第18条と別紙1に定められています。
第 18 条 〔ライセンス申請者〕
Jライセンスの申請日において、以下のいずれかの地位にあるクラブのみが、Jライセンスの申請者(以下「ライセンス申請者」という)となり得る。
① J1クラブ
② J2クラブ
③ 日本フットボールリーグ(JFL)に所属するJリーグ準加盟クラブ
別紙1
「ライセンス申請者」とは、Jライセンスを申請するクラブを意味する。
これは特に問題ないですね。
次に関わってくるのが、「ライセンシー」。
「ライセンシー」とは、Jライセンスを交付されたクラブを意味します*1。
ライセンス申請者がライセンスを取得できたらライセンシーに変化するというわけ。
そして、そのライセンスの交付を決定する「ライセンサー」。
これは、ライセンス交付機関のことで、交付規則第10条第1項に次のように定められています。
第 10 条 〔ライセンサー〕
(1) Jリーグは、JFAから日本におけるクラブライセンス制度の制定および運用の委任を受けたことより、日本におけるライセンス交付機関(ライセンサー)となる。
これは、前回の話のおまけにもあったJFA基本規程第72条第4項のことですね。
このライセンサー(=Jリーグ)は、「FIB」及び「AB」、「CLA」の3機関を設置します。
これらの正式名称と日本語の意味は以下の通り。
ただし正式名称は本資料にはないので、以前発表された資料*2から勝手に予想。
FIB(First Instance Body)=クラブライセンス交付第一審機関
AB(Appeal Body)=クラブライセンス交付上訴機関
CLA(Club License Agency)=クラブライセンス事務局
関係図で示すと次のようになります。
余談ですがこの画像作るのにリアルで1時間くらいかかりました…。
この画像を見て、CLAの影響力の大きさが伝わればいいなーと思います。
さて、ここまで触れていなかった事項について簡単に説明しておきます。
LMとはライセンスマネージャーのことでCLAの長を務める人のこと。
また、ライセンス評価チームとパネルはそれぞれの機関メンバーで構成された内部グループ。
ライセンス評価チームはLMが組織し、各パネルはチェアマンが組成することになっています。
その他ではCLA職員とFIB構成員・AB構成員は兼任が不可能。
また、FBI・AB・CLAはライセンス申請者・ライセンシーと一定の関係があってはならない。
といったような形で独立性に対する記述が多めですね。
そしてここで最も重要な記述が交付規則第17条第5項。
第 17 条 〔ABの権限および義務〕
(5) ABパネルの決定は、最終的かつ拘束力のあるものであり、これに対するいかなる不服の申立ても許されないものとする。ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所(CAS)は、AFCの不服申立機関であって、クラブとAFC間の問題についてのみ管轄を有する。
以前JFAが公開した資料*3では最終決定機関をCASとしていました。
前々回も使用したけどこんな感じ。
《平成22年度第2回理事会 協議事項7 8頁より》
《平成22年度第2回理事会 協議事項7 9頁より》
しかし、この条文を見る限りではABが最終決定機関となっています。
「AFCの不服申立機関~」というのはACL出場権等の話だと予測されますし、以前から大きく変わった部分ではないでしょうか。
各機関の関係・役割についてはこれくらいにして残りは第8回に丸投げしましょう。
続いてライセンスそのものについての話です。
第 21 条 〔Jライセンスの種類〕
(1) Jライセンスは、以下の 2 つのライセンスから構成される。
① J1に参加するための資格であるJ1クラブライセンス
② J2に参加するための資格であるJ2クラブライセンス
(2) J1クラブライセンスはあくまでJ1に参加するために必要な資格に過ぎず、J1クラブライセンスの付与は、当該付与されたクラブが翌シーズンにおいてJ1に所属することを保証するものではない。当該クラブが翌シーズンにおいてJ1に所属するためには、J1クラブライセンスの付与を受け、かつ、国内競技会の結果に基づきJ1への出場資格を得なければならない。J2クラブライセンスについても同様である。
ライセンスの種類は交付規則第21条。
上記の通り、J1クラブライセンスとJ2クラブライセンスの2種類があります。
面白いのは第2項の記述。
Jリーグの結果(昇格・降格)とは別の規程であるという至極当たり前の話なのですが、昇格が決まってから申請することは出来ないので多くのクラブがJ1クラブライセンスを目指すことになるのではないでしょうか。
全体の水準UPに効果的ですね 。
第 23 条 〔ライセンスの有効期間 / 取消し〕
(1) Jライセンスの有効期間は、当該Jライセンスの対象となるシーズンとする。
交付規則第23条第1項では、ライセンスの有効期限はそのシーズンのみとされています。
結構しっかりした物になりそうだなーと思うと同時に、経営的余裕の少ないクラブにとっては少なくない負担になりそうです。
第 22 条 〔Jライセンスの付与 / 譲渡〕
(2) ライセンス申請者が、第 8 章から第 12 章に定める各ライセンス基準のうちJ1に関するものであって、A等級のものを全て充足する場合は、J1クラブライセンスが付与されるものとする。ただし、かかる場合であっても、ライセンス申請者がJリーグ準加盟クラブである場合は、J2クラブライセンスが付与されるものとする。
(3) 前項に定める場合を除き、ライセンス申請者が、第 8 章から第 12 章に定める各基準のうちJ2に関するものであって、A等級のものを全て充足する場合は、J2クラブライセンスが付与されるものとする。
(4) ライセンス申請者が、第 8 章から第 12 章に定める各基準のうちA等級のものをいずれか 1つでも充足しない場合は、Jライセンスは付与されないものとする。
条文が前後しますが、交付規則第22条第2項~第4項。
第2項・第3項で、J1クラブライセンスとJ2クラブライセンスの違いについて説明していますね。
準加盟クラブがJ1クラブライセンスを取得できない理由は昇格条件とかと関係があるのかな?
そして、第4項ではA等級基準を1つでも満たさなければライセンス交付なしというライセンス交付において最も重要な記述がありますね。
今回は相当長かったけど、以上になります。
かなりボリュームがあったので端折り気味で申し訳ない限りです。
できる限り分かりやすく説明しようと努力しよう善処しました。
次回はライセンスの運用方法についてのお話。
また画像作らないといけないかもなぁ…。
*1:Jリーグクラブライセンス交付規則 別紙1
*2:平成22年度第2回理事会 協議事項7 クラブライセンス制度のJリーグへの権限委譲の件《JFA理事会 2010年5月20日付》
*3:平成22年度第2回理事会 協議事項7 クラブライセンス制度のJリーグへの権限委譲の件《JFA理事会 2010年5月20日付》