京都スタジアム(仮称)工事見学会 視察レポート
[Ⅰ]はじめに
京都サンガの新本拠地となる京都スタジアム(仮称)の建設が進んでいます。
工事進捗状況をドローンで撮影してyoutubeにアップできるとはすごい時代。
それとは別に、命名権や指定管理者の選定も進んでいるそうです*1。
命名権は契約期間20年間で交渉が進められており、安定した財源となるでしょう。
また、命名権の設定により、名称がコロコロ変わると馴染みにくい施設になりがち。
そういった面でも理想的な契約となりそうな予感があります。
指定管理者も京都サンガが参画できるようですし、契約期間も超長期。
ソフト面の支援は盤石と言って差し支えないのではないでしょうか。
そんな風に順調に進んでいる京都スタジアムで工事見学会があったので参加してきました。
撮影した写真を中心としたフォトレポートでお送りします。
[Ⅱ]JR亀岡駅とその周辺
京都スタジアムの最寄り駅はJR亀岡駅。
来年の大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公・明智光秀とも縁深い土地です。
このように駅のホームからスタジアムが見えるほどの近さ。
JR鳥栖駅とサガン鳥栖のホームスタジアムの関係性が一番似ているでしょうか。
駅の構内には早速京都スタジアムの模型。早速わくわくしてきました。
JR亀岡駅の南口ロータリー付近から見るとこんな感じ。
ちなみに、京都スタジアムは亀岡駅の東エリアに建設中です。
グーグルマップの映像は多少古いですが、駅との位置関係は分かりやすい。
JR亀岡駅の北口もまたバスのロータリーになっています(写真が暗くて申し訳ない)。
北口ロータリー側からスタジアムを望むとこんな感じ。圧倒的近さ。
駅方面から見えるスタジアムの全体像はこんな感じでした。
スタジアムを挟んでJR亀岡駅の反対側には保津川下りの乗船場もあります。
スタジアム観戦とセットでやっても楽しいかもしれない。
保津川下り乗船場の方から見たスタジアムの様子がこちら。
屋根かけ作業はまだまだかかりそうですね。
工事見学会の集合場所はスタジアム南東部にあるプレハブ施設。
[Ⅲ]スタジアム説明会①(来場者導線)
工事見学会は、パワーポイントを使用した説明会と現場見学のスタジアムの2部構成でした。
まずは屋内で行われた説明会について簡単なレポートをしたいと思います。
なお、説明会の冒頭で300名の枠に対して応募者が850名も殺到したという話がありました。
夏か秋頃にもまた見学会はあるそうですが、本当に当選して良かった…。
さて、いきなり大事な来場者動線の説明が初っ端にありました。
JR亀岡駅からスタジアムへの動線は、北側に多少迂回する経路を想定しているとのこと。
いくら駅に近いとは言え、短期間に殺到すると大変危険ですから滞留空間の検討は重要。
これでキャパシティ2万人を吸収できる計算になっているそうです。
ちなみに、スタジアムをぐるっと囲むように車道が走っていますが、北側広場周辺の横断箇所は試合時通行止めになるそうです。
こちらはスタジアム側から駅東の「商業施設」とされているエリアを撮影した様子。
この内、北側のブロックにはホテルが入る予定となっているそうです*2。
ここを通過する不埒者がいるのではないか…というのが想定される事象ではあります。
ただ、これについては完全私有地となるため普通にあり得ないという判断っぽいです。
柵を作るなり、ロープを張るなりといった対応は将来的に出てくるのかもしれません。
そうなってくるとおそらくボトルネックとなるのは駅の入退場口でありましょう。
こちらの写真はJR亀岡駅の北口にある2カ所の入口階段(上が西側、下が東側)。
一般利用者も当然いるでしょうから普通に考えれば西側は通行止めにされる予感。
また、駅の改札そのものも3レーンと多くありません(退場時の話)。
広島で例えると、「酒まつり畤の西条駅」みたいな状況に陥りそうだな気がしてならない。
こればっかりはどうしようもないので、入場制限+警備員増で切り抜けるのでしょう。
[Ⅳ]スタジアム説明会②(スタジアム構造と特徴)
続いてスタジアムの諸室を含めたスタジアム構造に話が移りました。
このように京都スタジアムは全4階建。
コンコースはマツダスタジアムや吹田スタジアムと同じくオープンコンコース。
他方で、トイレは吹田スタジアムと異なり、ワンウェイプランを採用しました。
個人的にはこのようにトイレの入退場は一方通行にするべきだと確信しています。
また、面白いなと思ったのはケータリングカーを直接スタジアムに乗り入れるシステム。
この画像右上にある「外部デッキ」付近の大外道路がケータリングカー乗り入れ箇所。
そこから車ごと乗り入れて、黄色のエリアに車を止めて西京極のように食販するそうです。
外からその通路付近を撮影した写真がこちら。
この階段の外側にあるゆったりとした坂道が乗り入れ専用道路となるようです。
新スタジアムでも従来の観戦文化に限りなく近づけようとするこの取り組みは面白い。
できるのかどうか分かりませんが、救急車の乗り入れ通路にもできたらいいかも。
また、観客席が最前列より2m張り出しているのは全国初だそうです。
その効用はよく分かりませんが、南スタンドをガラス屋根にしたり、愛宕山から吹き下ろす風を南北に通せるようにしたり、芝の養生に相当気を遣っている様子もよく分かりました。
こうした比較画像を見ると、やはり陸上競技場がサッカー観戦に適さないのは自明。
サッカースタジアムでたくさんの人にサッカー観戦して欲しいという思いは強くなります。
[Ⅴ]スタジアム説明会③(スタジアム多機能化)
上記画像にも出てきていますが京都スタジアムは多機能化に力を入れています。
一つ目は大河ドラマ館。冒頭でも紹介した「麒麟がくる」の展示施設です。
1年間の期間限定ということですが、ドラマの人気次第では延長があるのかもしれません。
二つ目がスポーツクライミング施設。
スタンドの関係で生まれる余剰空間を活かすという発想で誕生したそうです。
ただ、国際基準を満たすスポーツクライミングの屋内施設は日本初とのこと。
上手くいけば五輪後に新しい利用者層を開拓できるかもしれません。
三つ目はVRとeスポーツの関連施設。
これは任天堂がバックにいることと無関係ではないのでしょう。
どの多機能化もサッカーとは縁遠い層の需要開拓を目指していて大変興味深いです。
最後の施設はスタジアム外ですが、足湯を設置するという話。
こちらは試合日とは別に普段から周辺住民に利用して貰いたいという思惑が見えます。
ただ、前述したように駅東にできるビジネスホテルにも入浴施設は整備されるそうですから、そことの差別化はどうなのかなと言うのはちょっと気になりました。
[Ⅵ]スタジアム説明会④(建設関係)
多少マニアックな話になりますが興味を持つ方がいるかもしれないので紹介。
京都スタジアムでは基礎躯体及び地上躯体にプレキャスト工法が採用されています。
ざっくり説明すると、事前に作った建材をつなぎ合わせる工法のこと。
これによって相当省力化ができているのだとか。
また、屋根工事も地上で組み立てたものを釣り上げる手法をとっているそうです。
実際の様子がこちら。奥の大きなクレーンで持ち上げるそうですが、中々圧巻でした。
工事工程表がこちら。現在の進捗は80%程度で11月完成目指して頑張っているとか。
[Ⅶ]スタジアム内見学
さて、それではスタジアム内見学で撮影した写真を紹介したいと思います。
こちらはオープンコンコースの様子。
吹田スタジアムほど天井の圧迫感はないような印象を受けました(整備中だからかも)。
こういったスペースに売店やトイレが入るのでしょう。
上が北東のスタンドからの眺めで、下が北西スタンドからの眺めです。
屋根の設置工事の風景。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが南スタンドのガラス屋根です。
座席のサンプル。こっちは一般席の座席だったと記憶しています。
座面は薄いですが、背面にちゃんとドリンクホルダーがあるのが嬉しい。
こちらはVIP席だったかスカイボックステラス席だったか記憶が不鮮明。
手元にドリンクホルダーがあって座面も柔らかい。カラーリングは変更されるとか。
ちなみに京都スタジアムは座席を大きく4種類用意することで差別化を図るそうです。
桟敷席はマツダスタジアムの寝ソベリアをイメージすれば良さそう。
座席に選択肢を持たせるのは是非とも参考にしたいところです。
[Ⅸ]おわりに
以上が京都スタジアムの工事見学会フォトレポートです。
工事見学会に参加したのは今回が初めてのことでしたのでとても楽しい経験でした。
こうした見学会を実施することで府民・市民の関心を集めることは大事なことです。
税金の使途を監視するという意味でも、施設完成後の利用者数を増やすという意味でも、現在でも募集している寄付金をさらに増やすという意味でも価値はあるのでしょう。
広島のスタジアム建設に当たっても京都の取り組みを参考にしつつ、素晴らしい点は取り入れていってほしいものだと考えます。
*1:京都府立京都スタジアムのネーミングライツパートナー優先交渉権者の決定について《京都府ホームページ 2019年6月28日付》、京都府立京都スタジアム 指定管理者等選定審査会議事要旨について《京都府ホームページ 2019年6月28日付》。
*2:京都スタジアム隣にビジネスホテル 100室、日帰り温浴施設も《京都新聞 2019年4月24日付》。