サンフレッチェ広島 2016年通信簿(その二)
通信簿その二。
今回は入場者数とその施策について述べていきます。
[Ⅲ]入場者数…【良くできました】
2016年シーズンの集客数はリーグ戦の17試合で267,299人。
ACLとルヴァンカップを合わせても293,968人と、目標の30万人にわずかに届きませんでした。
目標に届かなかった2016年シーズンの集客はどうだったのか。
それを検証するためにも、リーグ戦各節の観客数を確認してみたいと思います。
この表にもあるように、2016年シーズンは2万人の大台を超えた試合が3試合ありました。
いわゆる「ドル箱」の試合が比較的多かったのが2016年シーズンの特徴です。
備考欄に特殊事情を記入していますが、浅野拓磨の退団(アーセナル移籍)セレモニーと森崎浩司の引退セレモニーが集客上、強い後押しになったのではないかと思います。
浅野拓磨選手ラストマッチ! 25,845人もの方にお越しいただき、ありがとうございました! 紫の誇りを胸に、浅野選手は世界の舞台へ旅立ちます!#sanfrecce pic.twitter.com/CpPl6C2Qly
— サンフレッチェ広島 公式 (@sanfrecce_SFC) 2016年7月17日
一方で、ドル箱ゲームが多かったにもかかわらず目標の30万人に届かなかったとも言えます。
成績が低迷したセカンドステージに観客数が伸び悩んだことも一因ではあるでしょう。
しかし、それ以上にクラブが金曜開催に踏み切ったことが大きく影響していると思います。
今年はリーグ戦の金曜開催が3回。4/1の仙台戦、4/15の新潟戦、5/13の柏戦。ACLの日程変更がなければ平日開催はこの3回のみ。金曜ホーム開催は恐らく2002年のナビスコカップ予選・浦和戦以来となる。平日金曜は今年が初めてか。https://t.co/e5kAUkC2HI
— awayisum (@awayisum) 2016年1月28日
調べた限りでは、サンフレッチェ広島が平日の金曜に試合を開催するのはクラブ史上初めて。
このような施策をとったのは、ACL出場による過密日程を回避するためでした。
1節 Hプレーオフ3勝者 中2日
— Pink (@pinktsui) 2016年1月28日
2節 Aソウル 中2日
3節 Hブリーラム 中3日
4節 Aブリーラム 中3日 *
5節 Aプレーオフ3勝者 中4日 *
6節 Hソウル 中4日
R16 1st 中3日 *
R16 2nd 中6日
*金曜開催により1日の空きを確保
ACLでは、火曜日に試合が開催されるケースがあり、土曜日にJ1のリーグ戦をすると日曜・月曜を挟んで中2日でアジア各地を飛び回らなくてはならないケースが生じます。
このことがACL出場クラブの負担になっているのではないかということは以前述べました。
awayisum.hateblo.jp
awayisum.hateblo.jp
この問題を解消するために、満を持して金曜開催を決行することになったのです。
前述しましたように、残念ながら結果は伴いませんでしたが。
金曜開催には当然リスクが存在します。その最大のリスクは集客に苦しむこと。
広島広域公園陸上競技場は、仕事が終わって駆けつけるにはハードルの高いスタジアムです。
そして、観客数が少なければ入場料収入が減少するのは当然のことですが、それに加えて広告料を払ってくれているスポンサーの方々にも理解を得る必要があります。
また、相手クラブやJリーグ、会場である広島広域公園陸上競技場の協力がなければ難しい話。
「金曜開催をすればいい」と言うのは簡単ですが、様々な調整が必要な施策なのです。
《サンフレッチェ広島より。この語呂合わせは結構好き》
サンフレッチェ広島は、一人でも多く集客するために色々と企画しました。
しかし、残念ながら金曜開催のホームゲームは全て1万人を大きく割り込むこととなりました。
ちなみにホームゲームで1万人を割ったのは2015年のホーム松本戦以来のこと。
また、3回以上、観客数が1万人未満のホームゲームがあったのは2011年以来5年ぶり*1。
2011年は東日本大震災が起こった年でしたから、金曜開催の影響の大きさが分かります。
以上のことから、「2016年シーズンは金曜開催に踏み切ったことで集客に苦戦したが、ドル箱ゲームでそれを穴埋めしたシーズンだった」と言えるでしょう。
夏場の集客が振るわなかったことなど課題も沢山ありました。
一方で金曜開催、成績不振とカープ優勝などなど逆風が多かったのも事実。
その中でドル箱の試合を上手く活かし、平均観客数が1万5千人を超え、年間目標の30万人に迫ったことは評価されて良いのではないかと思っています。
[Ⅳ]備考欄①…2016年シーズンの集客努力(チケット企画)
少し長くなるので、今回は項を分けて入場者数について補足しておきたいと思います。
2016年シーズンのサンフレッチェ広島はチケット販売に力を入れていました。
第一に、試合当日 座席アップグレードサービスを導入しました。
これは過去のサポーターズカンファレンスでも何度か提言があり*2、シーズンパスに特典を付けて欲しいという要望もあったことから導入されたのでしょう。
【おトクなシーズンパスに新特典が追加!】2016シーズンより『試合当日 座席アップグレードサービス』開始のお知らせ
《サンフレッチェ広島 2016年2月3日付》
サンフレッチェ広島では、2016シーズンより「シーズンパス」の新たな特典として、対象ホームゲーム当日に限り、試合会場にて、お持ちのパスの席種を変更できる『試合当日 座席アップグレードサービス』を開始いたします。
チケット代金の差額をお支払いいただくことで、お持ちのシーズンパスの機能・サービスはそのままに、いつもと違うお席でご観戦いただくことが可能です。普段とは気分を変えて応援したいときなどに、ぜひご活用ください!
一緒にスタジアムに行く人と席種を揃えて観戦したい場合。
また、普段は安い自由席でいいけど、混み合う日は確実な指定席で見たいという場合。
アップグレードサービスは、このようなニーズに対応することができるはずです。
実際にどれくらいの利用があったのか、成果を聞いてみたいですね。
第二に、FC東京戦限定で特殊なチケットを企画しました。
スタジアム見学会付きチケット「スタチケ」と特別学生割引企画「青春ペアシート」です。
《サンフレッチェ広島より》
《サンフレッチェ広島より》
前者は名前の通りスタジアム見学会がついたチケット。
スタジアム見学会はもともとクラブ会員向けの特典で、これを一般開放した企画です。
後者は高校生と大学生(専門学校生)を対象にSS席をペアで2,000円として販売しました。
SS席を通常購入すると1枚で5,300円(当日券だと5,900円)ですから相当な値引きです*3。
いずれも今まで利用したことがないけど気になっていた新規層を掘り起こす実験的企画。
特に学生が指定席を購入しようとすることは滅多にないでしょうから面白いと思います。
実際どちらも早々に売り切れたようですので好評だったのでしょう*4。
第三に、ついにカープとのコラボチケットが販売されました。
ついに実現!『SANFRECCE×CARP』限定コラボデザインチケット“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket 2016”の販売について
《サンフレッチェ広島 2016年5月5日付》
広島をホームグラウンドとする2大プロスポーツチームとして、初めてのチケットコラボがついに実現!!!
このたびサンフレッチェ広島と広島東洋カープでは、“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket”と銘打ち、お互いの指定ホームゲーム1試合ずつのチケットが1枚のコラボデザインシートに融合した特別チケットを、5月以降随時発売していきます。チームカラーがクロスオーバーしたチケットには、両チーム選手の雄姿が競演!毎回その登場選手が変わる、まさに夢の永久保存版です!!
カープもサンフレッチェも好きだと公言する人の多い広島だからこそできる企画でしょう。
個人的にはカープとサンフレッチェに限らず、トップス広島としてコラボチケットを販売することで、様々な交流が広がれば面白いなと思っています。
そのきっかけにもなり得る非常に良い試みなのではないでしょうか。
また、2017年シーズンからシーズンパスがPASPYと分離し、サンフレッチェクラブ会員証と統合されるというのも大きなニュースでした。
実際に使ってみないと感触は分かりません(PASPYとの2枚持ちになることは変わらない)。
ただ、ポイント付与のためにわざわざ会員証を取り出すのが手間だったのは事実。
入場直後の利便性は確かに向上するかもしれません。
これらの他に、QRコード販売チケットを対象としてチケットレス入場サービスが開始され、QRチケットの表示方法も改善されるなどサービス改善に取り組んでいるようです。
[Ⅴ]備考欄②…2016年シーズンの集客努力(アクセス対策)
集客努力というものはチケットを企画することだけではありません。
広島広域公園陸上競技場がアクセス面で難しさを抱えていることは以前述べました。
しかし、新しいスタジアムが簡単にできるわけもなくアクセスも早々良くはなりません。
むしろ2016年シーズンはさらに臨時駐車場用地が減っているくらいです。
そのようなアクセス問題を直視した上で対策を打つのがクラブのお仕事。
そこで、2016年シーズンの終盤、ついにクラブも重い腰を上げて、広島駅、紙屋町、廿日市、商工センター発着のシャトルバスを試験運行することになりました*6。
【本日、申込締切日!】エディオンスタジアムまでが、“速い☆近い☆快適☆”『広島市中心部・西部方面からの直行バス運行』のお知らせ
《サンフレッチェ広島 2016年9月29日付》
●10月1日(土)の実施内容
(1)広島駅便(JR乗継、紙屋町・八丁堀乗継で最速帰宅)
・16:00と17:45の2便
・JR広島駅新幹線口発~城南通り・高速4号経由
・復路は、乗車次第運行。試合終了後30分後まで。
エディオンスタジアム発 ~ 県庁前 ~ 八丁堀 ~ 広島駅新幹線口
(2)紙屋町便(紙屋町とエディオンスタジアムを最短で結ぶ。紙屋町・バスセンター乗継で最速帰宅)
・16:00と17:45の2便
・県庁北発~城南通り・高速4号経由
・復路は、乗車次第運行。試合終了後30分後まで。
エディオンスタジアム発 ~ 県庁前
(3)廿日市便(ショッピングセンターから宮島スマートICでスタジアム前駐車場までを最速・最短で結ぶ)
・15:30と17:30の2便
・ゆめタウン廿日市(マルハン横駐車場)発~宮島スマートIC経由
・復路は、乗車次第運行。試合終了後30分後まで。
(4)商工センター便(公共施設・商業街区が集積する広島市西部の拠点とスタジアム前駐車場までを最速・最短で結ぶ)
・15:30と17:30の2便
・サンプラザ隣西部埋立第5公園西発~草津沼田道路経由
・復路は、乗車次第運行。試合終了後30分まで。
●乗車料金
・各ルート往復1,080円
・大人・子供同額
●最少催行人員
・1人
クラブに身を切る覚悟ができたようですので、それをサポーターは支えるだけです。
この試みに一定の成果が出ていることを期待しています。
この他にもいくつかスタジアムの集客対策として新しい取り組みがありました。
まず、ヤマト運輸の協力で実現したてぶらで観戦 てぶらで帰宅という企画。
3月12日(土)vs.湘南ベルマーレにて、「てぶらで観戦 てぶらで帰宅」サービス実施のお知らせ
《サンフレッチェ広島 2016年3月9日付》
エディオンスタジアムでお客様の手荷物を当日中、一時的にお預かりします(500円/個)。
ご希望の方には、お土産や手荷物を全国各地へ翌日(一部地域を除く)お届けします(宅急便の送料は別途、必要になります)。
※先着限定100個までのお預かりとなります。BOXがいっぱいになり次第、終了となります。
※宅急便の発送について、サービスレベル・料金は、宅急便サービスに準じます。
サッカー観戦に限らず大きな荷物を抱えて移動するのは大変です。
そういうときに最寄り駅などにコインロッカーがあると重宝します。
しかし、アストラムライン広域公園前駅のコインロッカー数は非常に少ないのが現状*7。
もちろん、これは普段の利用者数を考えれば当然の話であるのですが。
そのため、試合中に荷物を預かって郵送もしてくれるサービスは非常に便利です。
ただ、市内に住むサポーターが大きな荷物を持ち込むときは車を利用するでしょうし、スタジアムで突然荷物が増えるケースも想定しにくいところではあります。
一方、大荷物を抱えて遠征してきたアウェイサポーターにとっては非常に有益でしょう。
また、新スタジアムができたときのための試験としても価値ある取り組みです。
周辺に商業施設があれば買い物をしてスタジアムに行くようなケースがありえますから。
もう一つの取り組みとして、外国の方々をスタジアムに呼び込もうという趣旨から、英語版のスタジアムガイド動画が公開されました。
これはACLの出場に合わせて作られたものだと思います。
4回目の出場にして漸くという感じですが、こうした改善をこつこつ積み重ねたいものです。
*1:正確には、2011年シーズンは1万人を割るホームゲームが4回あった。5月29日(日)の第13節鹿島戦(8,049人)、6月22日(水)の第17節山形戦(7,593人)、7月18日(月・祝)の第5節福岡戦(9,864人)、8月13日(土)の第21節名古屋戦(7,099人)。
*2:第3回及び第5回サポーターズカンファレンス議事録。当時、チケットアップグレードサービスを採用しなかった理由は「チケットぴあのシステム上難しい」からだとしていた。
*3:クラブ会員の場合はもう少し安い。チケット発売日/座席/料金表《サンフレッチェ広島 2017年1月25日閲覧》。
*4:いずれも9月3日に完売のプレスリリースが出た。10月1日(土)明治安田生命J1リーグ2ndステージ第14節vs.FC東京『青春ペアシート』完売のお知らせ《サンフレッチェ広島 2016年9月3日付》、10月1日(土)明治安田生命J1リーグ2ndステージ第14節vs.FC東京 スタジアム見学会付きチケット、『スタチケ』完売のお知らせ《サンフレッチェ広島 2016年9月3日付》。
*5:第一弾:ついに実現!『SANFRECCE×CARP』限定コラボデザインチケット“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket 2016”の販売について《サンフレッチェ広島 2016年5月5日付》、第二弾:『SANFRECCE×CARP』限定コラボデザインチケット“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket 2016”【第2弾】発売について《サンフレッチェ広島 2016年5月18日付》、第三弾:『SANFRECCE×CARP』限定コラボデザインチケット“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket 2016”【第3弾】発売について《サンフレッチェ広島 2016年6月2日付》、第四弾:今回が最終弾!『SANFRECCE×CARP』限定コラボデザインチケット“HIROSHIMA Dream Collaboration Ticket 2016”【第4弾】発売について《サンフレッチェ広島 2016年7月28日付》。
*6:10月29日福岡戦でも試験運行している。《10月29日限定の特別企画》エディオンスタジアムまでが、“速い☆近い☆快適☆”『広島市中心部・西部方面からの直行バス運行』のお知らせ《サンフレッチェ広島 2016年10月14日付》。過去のシャトルバス運行に関する検討を含めたアクセス上の問題については、第14回サポカン ~サンフレッチェ広島の抱えるアクセス事情と課題~参照。
*7:肝心の広島広域公園陸上競技場にコインロッカーが存在するかは確認できていない。ただ、目視できる範囲で見かけた記憶はないので、あったとしても数は少ないものと予想している。