第14回サポカン ~サンフレッチェ広島の抱えるアクセス事情と課題~
先日、作業部会の結論に対する分析をまとめました。
これが思った以上に大変な作業だったためしばらくサボっていましたが、今年もサポーターズカンファレンスでの意見交換に着想を得て1本書くシリーズを片付けておきたいと思います。
テーマ1 クラブについて(織田秀和 代表取締役社長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
【経営面について】
多くの皆さまにエディオンスタジアムに足を運んでいただかなければ、賞金に関係なく売上を30億円にしたいという我々の思いには届かず、さらなる努力が必要です。後ほどスタジアムの話もいたしますが、スタジアムができたとしても、早くて3~5年先の話になります。我々のホームスタジアムは、当面、エディオンスタジアムとなります。そこにお客様にお越しいただかなければなりませんので、より一層、努力と工夫をしていきたいと思います。
今回のテーマは広島広域公園のアクセス問題について。
サッカースタジアムの話題と隣接する本テーマを再確認しておきたいと思います。
本稿は広島広域公園のアクセス問題について、現在の状況と過去の対策を評価した上でこれからどうなっていくのかという将来の話まで総ざらいした総集編のような構成となっています。
最初に申し上げておきますが基礎的なところから始めますので大長編になりました。
分割することも検討したのですが、内容的に1本にまとめることにしました。ご了承下さい。
画像を多用してできる限り分かりやすくしたつもりなのでお付き合いいただければ幸いです。
また、今回 みきゆす (@mikiyus)さんのブログを参考にさせていただきました*1。
この場を借りて御礼申し上げますとともに日頃の取り組みに敬意を表します。
徳は孤ならず [ 木村元彦 ] |
[Ⅰ]広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅲ]原因定義編:広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅳ]対策検証編:アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅴ]結論と今後:おわりに=終わりのないアクセス問題
さて、早速ではありますが現在のアクセス事情を確認していきましょう。
広島広域公園へのアクセス方法は大きく5つのパターンに分けることが出来ます。
すなわち自家用車、アストラムライン、シャトルバス、路線バス、その他*2です。
この項では市内との距離感、特徴などをザックリ見るだけなので詳しい話はしません。
普段から利用していると耳にタコな話も多いので、そういう人は[Ⅱ]まで飛ばして下さい。
①自家用車でのアクセス
自家用車で来場する場合は、一般道、山陽自動車道、広島自動車道、広島高速4号線を通り、広島広域公園の常設駐車場(無料)、サンフレッチェ広島が試合日に用意する臨時駐車場(無料)、もしくは近隣の一般駐車場(有料)に車を駐める必要があります。
1つ目の常設駐車場は、スタジアム正面にある640台*3。
2つ目の臨時駐車場は、投てき場裏駐車場、セブンイレブン横臨時駐車場、第Ⅲ期北臨時駐車場、第Ⅲ期南臨時駐車場の4ヵ所が用意されています。
位置関係が分かりにくかったので、次のような画像を用意してみました*4。
《サンフレッチェ広島の資料をもとに一部改変した》
なお、サンフレッチェ広島が明らかにしていないため臨時駐車場の収容台数は不明です。
3つ目の一般駐車場については全体を把握できていないため割愛します。
②アストラムラインでのアクセス
続いてアストラムラインですが、路線図は次のようなクエスチョンマークもどき。
今の世の中に疑問を投げかけるためにこのような形になったというわけではありません。
《広島高速交通株式会社より》
2015年に新白島駅が開業したことでJRとの接続はかなり改善されました*5。
また、中筋駅は広島空港とリムジンバスで接続しており、始発の本通駅は広島市中心部です。
これらのことから自家用車と並ぶ基幹的なアクセス手段となっています。
一方、本通駅から遠回りするため約37分かかり*6、値段も比較的高く*7、広域公園前駅から1km弱(約15分)の上り坂が待っていることから市民の利用は伸び悩んでいる印象*8。
また、現在路線延伸が議論されていますが環状線化するわけではありません*9。
大部分は高架橋の上を走る仕様上、待避駅もないので快速運行もできていません*10。
全国にたくさんあるTHE 第三セクターというような交通機関ですね。
1994年広島アジア大会のために整備されたので当たり前と言えば当たり前なのですが。
③横川シャトルバス・路線バス
横川シャトルバスと路線バスについてはほぼ同じルートを通ります*11。
違いは、横川シャトルバスはスタジアム正面で、路線バスはバックスタンド側で降車する点。
※9/12追記 横川シャトルバスの経路が間違っていたため修正しました。
便数の多さ、降車場の近さ、電車との接続の良さなどから横川シャトルバスは人気です。
入場者数の多い試合は行きも帰りも長蛇の列となることが少なくありません。
《2016年8月20日撮影。広島広域公園に設置された帰宅用待機列。》
これに対して、停留所・車内の様子を見る限りでは路線バスの利用は多くないようです。
停留所からスタジアムまで上り坂であること、バックスタンド側に出てしまうこと等も理由として考えられますが、最大の理由は認知度と便数の問題でしょう。
バスはアストラムラインよりも便利な点もあるのですが、如何せんキャパシティが小さい*12。
また、どうしても道路事情に影響を受けてしまうため、安定的なアクセス手段という意味では試合日に臨時便を出してくれるアストラムラインに軍配が上がるでしょう。
④スタジアムアクセスを全国と比較した場合
①~③まで広島における広島広域公園の主要アクセス方法を見てきました。
ここで視点を変えて、全国のスタジアムと比べて広島広域公園はどのような立地なのか。
広島県外のスタジアムと比較した場合をごく簡単に確認しておきたいと思います。
アウェイ観戦を通じて私自身それなりの数のスタジアムを見たつもりです。
その中で、スタジアムまでそれなりに歩かせるスタジアムは沢山ありました。
例えば以前当ブログでも取り上げました大宮の本拠地・NACK5スタジアムがそうです。
ただ、坂道を上らせるスタジアムというのはあまり記憶にありません。
《2016年8月20日撮影。広島広域公園の敷地に入ってからも坂道は続く。》
また、Jリーグが毎年実施している観戦者調査には平均アクセス時間という項目があります。
この調査によると平均アクセス時間がリーグ平均よりかなり長いことが示されています*13。
これらのことから全国的に見てもアクセスが良いスタジアムとは言えないでしょう。
最後に、広島広域公園のアクセスについて取り上げているサイトをご紹介しておきます。
ameblo.jp
blog.domesoccer.jp
www.soccer-king.jp
[Ⅱ]広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅲ]原因定義編:広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅳ]対策検証編:アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅴ]結論と今後:おわりに=終わりのないアクセス問題
広島広域公園がアクセス上の問題を抱えていることは一般に認知されていると思います。
では、具体的にどのような問題が発生しているのでしょうか。
2013年に開催された第3回スタジアムシンポジウムでは次のような点をあげていました。
この資料やサポカンにおける説明などから問題点を整理すると次のようになります。
他にも問題は起こっているかもしれませんが、本稿ではこの4点とします。
また、上記画像にはスペース上の理由で書けなかった話が2つあるので補足。
1つは不正駐車について。
この問題は近年表面化していなかったのですが今年再びアナウンスがありました。
もう1つは経費負担について。
臨時駐車場の用地確保のための交渉時期はシーズンパスの販売時期と被っており、従業員をそちらに取られることは大きな負担だという話がありました。
リンクを貼っておきますので臨時駐車場の整備とあわせてご確認下さい。
【第1回協議会】②(小谷野)西風新都の、普段駐車場として利用していない土地を地権者の方と交渉して臨時駐車場として使わせて貰っている。年末の書き入れ時にサンフレの営業マンは地権者に来年も土地を買して貰えるように交渉して歩く。貴重な人手が取られてしまう。 #sanfrecce
— ちょっつ@勝ち点47? (@chottu_LB) 2013年6月6日
www.sanfrecce.co.jp
それでは、これらの問題が発生する原因を分析していきましょう。
[Ⅲ]広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅲ]原因定義編:広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅳ]対策検証編:アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅴ]結論と今後:おわりに=終わりのないアクセス問題
前項では広島広域公園のアクセス問題を列挙しました。
このアクセス問題が発生する要因は色々と考えられると思います*14。
それを承知の上で、本稿では先のアクセス問題の原因を次のようにまとめました。
それでは各項目ごとに詳しく見ていきましょう。
①マイカー利用率が高い
車利用率の高さについては、先日取り上げたものを再掲します。
サッカー場 広島みなと公園に建設なら 「車で観戦に」5割超す 県などが千人調査
《中国新聞 2016年1月19日32面》
サンフレッチェ広島によると、エディオンスタジアム広島で昨年あった公式戦の来場者のうち、車で訪れた人は1試合平均35%程度。ただ「把握できていない駐車もあるとみられ、多く見積もると5割弱」という。周辺では渋滞や駐車場不足が問題となっている。
近年マイカー利用率は公表されていませんが数年前までは50%前後で推移していました*15。
では、なぜここまでマイカーの利用率が高いのでしょうか。
そこで、マイカーと公共交通機関のメリット・デメリットを簡単に整理してみました。
上記表を端的に言い換えると、マイカー利用は利便性で勝る。
それに対して、公共交通機関は安全性・確実性で勝るということになります。
常設駐車場・臨時駐車場は無料なので、マイカー利用の場合発生するのは高速代くらい*16。
渋滞を切り抜けられれば(もちろん人・試合によりますが)圧倒的に早く帰ることが可能です。
一方、公共交通機関利用は思った以上にデメリットがあるように感じました。
ちなみに、誤解のないように言っておきますが私は普段公共交通機関を利用しています。
特に遠方の方、荷物が多い方、子連れの方にとってはマイカーの方が楽だろうと思います。
②道路事情の問題(フロー問題)
広島広域公園周辺で道路事情が問題となるのは、駐車場の出口付近と高速との接続道路に車が集中することにあります。
駐車場への入場は基本的に分散するからいいのですが、退場は一度に車が集中します。
本来駐車場ではない臨時駐車場はもちろん、常設駐車場も大混雑しているのが現状です。
広島広域公園から車で帰る際にまず選択肢としてあがるのが広島高速4号線と五日市IC*17。
そして、常設駐車場から広島高速4号線・五日市IC経向かう道路と、臨時駐車場から向かうルートはどちらもほぼ一本道。
逃げ道がないため車が集中し、前に一歩も進めないなんてことがままあります。
③駐車場の問題(ストック問題)
前述したように広島広域公園付近には常設駐車場、臨時駐車場、一般駐車場があります。
わざわざクラブが臨時駐車場を用意しているのは常設駐車場だけでは賄いきれないから。
そもそも、「ビッグアーチ周辺の臨時駐車場は、売却用に土地開発したものを、売却が決まるまで、もしくは建物が立つまで、一時的にお借りしている」ものです*18。
現在の臨時駐車場用地で撮影してきましたが、周辺もかなり開発・売却が進んでいました。
《2016年8月20日撮影。左はセブンイレブン横臨時駐車場、右は第Ⅲ期南臨時駐車場付近。》
当然ではありますが、売却・開発が進めば進むほど近くにある臨時駐車場の用地はなくなり、さらには用地そのものが減っていくことになります。
今回のサポカンでも臨時駐車場の用地について言及がありました。
テーマ2 チーム強化について(足立修 強化部長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
回答(織田社長)
アクセスに関しては、ご承知のとおりエディオンスタジアム付近に駐車場はございません。西部新都造成地をお借りして、駐車していただいています。ただ、お借りしている用地は、本来、物を立てる土地です。今でもどんどん造成が完了し、工場や家が建ち、駐車場として使えるスペースは減っています。将来的にはゼロになる見込みということもあり、公共交通機関をいかに使いやすくしていくかを考えたいと思います。
すでに現在、臨時駐車場の用地は減少傾向であり、将来的にはゼロ予想。
マイカー利用者にとってはなかなかショッキングな話題です。
将来的な予測は置いておくとして、現在すでに減少傾向というのは事実なのでしょうか。
前述したように近年サンフレッチェ広島は臨時駐車場の収容台数を明らかにしていませんが、調べたところ、2011年のサポーターズカンファレンスでは台数について言及していました*19。
3.アクセスの改善及び観客動員について(山田)
《第7回サポーターズカンファレンス議事録》
中でも44%を占めるマイカーの駐車場ですが、現在ビッグアーチの駐車場が1200台、テニスコートの駐車場が250台、大塚駅から真っすぐ上がったこころ西部の駐車場が600台、それから西風新都のインターチェンジ付近が1500台です。トータルで3800台ぐらいですが、余裕を持って見積もると3600台です。
この3600台ですが、来季は分譲用地に使用されるため3200台まで減少します。
ビッグアーチの駐車場はおそらく常設駐車場+αを意味しているものだと考えられます。
つまり、2011年頃は臨時駐車場として2,500台強確保できていたのではないでしょうか。
一方、2013年の第3回スタジアムシンポジウムでは2,200台が上限という話でした。
このときから第Ⅲ期南臨時駐車場が新設されていますが、西風新都IC臨時駐車場は廃止。
さらに、今年の夏からテニスコート下臨時駐車場も廃止されることになりました。
広島広域公園周辺の臨時駐車場用地が減少傾向であることを否定する材料は見つかりません。
[Ⅳ]アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅲ]原因定義編:広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅳ]対策検証編:アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅴ]結論と今後:おわりに=終わりのないアクセス問題
それでは前項の原因を取り除くにはどうすればいいのでしょうか。
具体的な対策と、実効性の有無について過去の議論を踏まえて確認していきましょう。
①マイカー利用率が高い
マイカー利用率を引き下げるためには公共交通利用転換しかありません。
この問題は長年の懸案事項だったため様々な対策が検討されてきました。
その一つが、サンフレッチェ広島が実施する公共交通機関利用キャンペーン。
《サンフレッチェ広島より》
公共交通機関を利用することに新たな付加価値を付けるという対策ですね。
これは2014年のサポカンでも一定の成果を上げていると説明していました。
3)試合運営について(高尾邦彦運営部長)
《第12回サポーターズカンファレンス議事録》
【スタジアムへのアクセスについて】
また、「公共交通機関の利用促進に関して、景品のプレゼントで効果はあったか」というご質問をいただいておりますが、これは確実に効果が出ていると考えております。我々の調査データによると、本キャンペーンを行う前の2011年については公共交通機関の利用率は23%前後でした。企画をスタートさせた2012年には28%弱、昨年度は28%強と、数字は少しずつではありますが改善方向にあります。今後も継続的にキャンペーンを実施しようと思っています。
この分析にあたって集客数の増減や駐車可能台数の変化などを考慮しているかは不明です。
そこで、前述のマイカー利用率に平均観客数を乗じて実際の利用者数を算出してみたところ、2007年に5,000人台だったものが2008年以降6,000人台に増加し、2015年は再び5,000人台に減少していることが分かります*20。
2012年~2014年のデータがないので片手落ちですがマイカー利用者は減っているのでしょう。
ただ、サンフレッチェ広島のそれは根本的解決になっていないのが現状。
その最たる理由は、広島広域公園のアクセスが囚人のジレンマに陥っていることにあります。
極めて簡易な図ですが、こんな状況が起こっているのではないでしょうか。
なお、混雑時には利益衝突の際に駐車場不足も問題として出てきます。
この根本的な問題を解消するためには公共交通機関の利便性を高めるか、マイカー利用の利便性を落とすか、という二択しかありません。
前者は④で述べますので、ここでは後者について見ていきたいと思います。
マイカーの利便性を落とす方策として考えられるのは有料化です。
これは当ブログでも、かなり昔にものすごく簡単に取り上げたことがあります。
常設駐車場の有料化については所有者と指定管理者の同意が大前提となるのでしょうが、常設駐車場と臨時駐車場の差別化という意味でも検討の余地があるのではないかと述べました。
この他に臨時駐車場の有料化、シャトルバスの有料化も論点としてあります。
シャトルバスの有料化については2014年のサポカンで説明がありました。
3)試合運営について(高尾邦彦運営部長)
《第12回サポーターズカンファレンス議事録》
【スタジアムへのアクセスについて】
臨時駐車場からのシャトルバスにつきましては「整備費用、ガソリン代などという部分で片道の徴収をしてはどうだろうか?」というご意見をいただいておりますがご利用の際に料金をいただくには、路線申請が必要です。無許可で行うことは基本的には法律違反になります。今すぐに、という事にはならないと思いますが、大きな駐車場コストを考えると今後の検討課題であることは間違いありません。
小谷野社長
追加でコメントいたしますと、以前にもどこかで説明したかもしれませんが、料金徴収をすると、現在、駐車場を提供してもらっている地権者さんとの交渉に跳ね返ってくる可能性も考慮する必要があります。コストの面を考えるとノドから手が出るほど料金を取りたいところですが、それが二次効果、三次効果を招くとどうなるか分からない部分もあります。私個人としては慎重に検討したいと思っております。
ここで小谷野前社長が述べられている話は臨時駐車場の有料化でも同じことが言えます。
これらを有料化するのは「言うは易く行うは難し」なのでしょう。
また、マイカー利用の利便性を落とすのは劇薬です。
たしかにマイカー利用の利便性を落とせばマイカー利用者が減るので利用率も下がります。
しかし、マイカー利用者を減らすということは観客数を減らすことにも直結しかねません。
観客数を増やすためのアクセス改善によって観客が減ったとなれば本末転倒。
クラブとしてもそこは慎重にならざるを得ないでしょう。
②道路事情の問題(フロー問題)
フロー問題を解決する方法は、①のマイカー利用を減らすか、道路環境を改善することです。
しかし、後者に関してはサンフレッチェ広島がどうこうできる問題ではありません。
現在第Ⅲ期南臨時駐車場のある辺りで進められている西風新都環状線(梶毛南工区)が開通すれば選択肢も増えるのですが、まだ数年以上先の話*21。
《2016年8月20日撮影》
今回のサポカンでも取り上げられていましたがレーン制御という考え方はあります。
ただ、これも指摘されているような問題があり、文句なしの改善策はなかなかありません。
テーマ1 クラブについて(織田秀和 代表取締役社長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
回答(織田社長)
先日、ある方に「道路渋滞で困っている」という話をすると、「試合のときだけ、バスレーンを作ればいいのでは?」という意見をいただきました。しかし、そうなると一車線減るため、今度はマイカーの人たちが困ってしまいます。どのような形をとればいいのか、いろいろ悩んでいるところです。
③駐車場の問題(ストック問題)
この中でも臨時駐車場の確保に関しては第三者が絡む問題ですから解決は難しいでしょう。
これに対して、常設駐車場の拡大という視点で広島広域公園周辺に立体駐車場を作るという意見は過去何度か出ており、今回のサポカンでも言及がありました。
テーマ1 クラブについて(織田秀和 代表取締役社長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
回答(織田社長)
これも1つのアイデアレベルですが、例えば今のエディオンスタジアムの砂利の駐車場を、2階建て、3階立ての立体駐車場にする、というプランも考えられます。ただ、立体駐車場にしても、車を出庫するときに混みますので、そのあたりも配慮しなければいけません。
発言の中でも指摘されていますが、フロー問題のさらなる悪化が考えられるほか、駐車場を誰が整備するのか、試合日以外の稼働率はどうなのかという問題もあります。
④公共交通機関の利便性が悪い
公共交通機関の利便性を改善する方法として、既存の公共交通機関の問題を改善する方法と、新規に公共交通機関を用意する方法の2つが考えられます。
前者の代表例が広域公園前駅からのシャトルバスだったのですが、前述したように昨年廃止。
既存の公共交通機関を改善する方法というのはとりうる選択肢があまり多くありません*22。
後者の方法の代表例が現在の横川シャトルバス。
これをもっと多方面に拡充できれば公共交通機関の利便性は上がるはずです。
今年のサポカンでも次のような説明がありました。
テーマ1 クラブについて(織田秀和 代表取締役社長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
【経営面について】
これは私のアイデア段階ですが、今は横川からスタジアムにシャトルバスが出ております。それを紙屋町や広島駅、あるいは西からの便を増やすことができないか、これから探っていきたいと思っています。今年すぐできるかどうかは別として、アクセスを改善していくことで、お客さまに少しでも来ていただきやすい状況を作らなければいけません。
効果的な方法に思えますが、実は過去のサポカンで参加者から何度も提案があった案件です。
2008年と2009年のサポカンでは次のような回答をしていました。
3.アクセスの改善(高田)
《第4回サポーターズカンファレンス議事録》
回答 (高田)
また、横川からのシャトルバスを運行し始める前に、紙屋町からの発着を検討しました。そのときにネックになったのが、どこから出すかということ。バスセンターをご利用になった方はご存じかと思いますが、バスセンターは既に飽和状態で、発着拠点にすることはバス会社、バスセンターからの理解を得られない状況です。県庁付近からの発着も難しいということで、結果的に横川となった経緯があります。
シャトルバスを運行する場合に大切なことは、『一定時間で確実にアクセスできる』ということ。広島駅からのシャトルバスも考えましたが、広島駅と横川駅は距離的に大差はないのですが、時間帯によっては交通渋滞が起きやすいところがあります。シャトルにならないんですね。そういう経緯があり、JR山陽本線という大動脈に繋がる横川駅に決定しました。そういうことでご理解頂ければと思います
3.アクセスの改善(山崎)
《第5回サポーターズカンファレンス議事録》
回答 (山崎)
昨年度も、アルパークからバスを発着してほしいというご要望がございました。アルパークからのシャトルバスについても広島電鉄の自主運行であり、ご利用されるお客様が少ないということから、昨年度の春先に運行中止となった経緯があります。
当時と現在では事情が変わっている可能性は十分あります。
是非、再度検討して頂きたいのですが、決して簡単な話ではないと理解しておくべきです。
[Ⅴ]おわりに=終わりのないアクセス問題
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセス事情
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園の抱えるアクセス問題
- [Ⅲ]原因定義編:広島広域公園のアクセス問題はなぜ起こるのか
- [Ⅳ]対策検証編:アクセス問題の解決策とその限界
- [Ⅴ]結論と今後:おわりに=終わりのないアクセス問題
今回は、広島広域公園のアクセスの現状を概観した上で、アクセス問題の認識、その原因の定義、さらにその解決策を検証するというような順番で見てきました。
これまでの話を整理すると、根本的解決のための手段が非常に少ない。
そして過去に検討され、様々な理由から却下されたものが大半だということが分かります。
しかし、現実は臨時駐車場用地が減るペースに公共交通利用転換が追いついていない状況。
多少のリスクは承知の上で手を打たなければいけない時期が近づいています。
それを強く感じられたのが今年のサポカンと、今夏実施されたアンケートでした。
テーマ3 試合運営について(佐々木温 運営部長)
《第14回サポーターズカンファレンス議事録》
【アクセスについて】
臨時駐車場については、社長からもご説明がありましたが、用地の造成が終わっております。現在、駐車場としてお借りしているエリアに、新たに使用可能な用地が増えることはありません。さらに減少していくことが考えられます。ただ、そのまま何も対策を行わないわけにはいきません。次の手を打つのが我々の使命だと思っています。
臨時駐車場については、できるかぎり確保をしていきたいと思っています。ただ、用地をお借りしている方との関係もありますので、お約束ができかねるところはご理解ください。さらなる公共交通機関の利用の促進、パークアンドライド、臨時便の増発、広島駅や五日市、廿日市の駅前からシャトルバスを運行することは、数年前から検討しています。諸事情から断念したこともありますが、それは以前の話です。どのタイミングで実施できるか分かりませんが、前向きに検討して、違うルート路線を構築できるように改善していきたいと思います。
このように、過去却下された検討を掘り起こして再検討する模様。
降格した頃と比べてシーズンパスの販売数も増えていますし、平均観客数も増加。
更にはありがたいことに好成績に引っ張られる形で原資もあります。
ここは経営の安定化のためにも投資するフェーズでしょう。
また、アンケートでは駐車場有料化と廃止の場合の反応を確かめるような質問がありました。
《サンフレッチェ広島 2016年WEBアンケートより》
アクセスに関して、こういったタイプの質問は従来なかったように思います。
臨時駐車場消滅が現実の問題としてクラブの中で共有されている証左ではないでしょうか。
一方で、クラブもアクセスの悪さを嘆く前にするべきことがあります。
その一つがホームページにおけるアクセスマップの分かりづらさの改善です。
この交通・周辺案内を見てどれだけの人が理解できるでしょうか。
例えば臨時駐車場の場所はグーグルマップ上で示されていますが、エリア表示はない。
実際に行って、看板や警備員を探せというのは新規にまったく優しくありません。
また、スタジアムからの復路の説明や、停留所・駅とスタジアムの関係図があった方がいい。
また、試合イベント等のプレスリリースにアクセス情報は載っています。
しかし、文字情報のみで一見して分かるような構成ではありません。
余所でもそんな感じなのか気になったのでJ1の全クラブのアクセス情報を調べてみたところ、最もスタジアムアクセスが分かりやすいのは鹿島アントラーズでした。
<J1クラブのアクセス案内評価・鹿島編>https://t.co/GjbHIJb11V
— awayisum (@awayisum) 2016年9月3日
極めて直観的で手段別・出発地別の案内がすぐ分かる。往路と復路を分けているのもいい。現地写真もあり、車利用者のための迂回路マップまで用意されているという至れり尽くせりの案内。
誰に対してスタジアムのアクセスを説明しないといけないのか。
そういったカスタマーファーストの姿勢が鹿島はよくできています。
もちろんスタジアムのアクセスが悪いことと無関係ではないでしょうが。
アクセスが集客上の課題だというのであれば、まず手をつけるべきはここです。
余談ですが、先ほどのアクセスのページに広域公園前駅からスタジアムまで徒歩約5分とありますが、5分で行こうと思うと上り坂を全力疾走しないと無理なのでご注意下さい。
本稿の結論を最後にまとめておきます。
- [Ⅰ]基礎知識編:広島広域公園のアクセスが良いとは言えない
- [Ⅱ]問題認識編:広島広域公園のアクセス問題は周辺迷惑、機会損失、余計な経費の3つ
- [Ⅲ]原因定義編:アクセス問題は車利用率が高く大規模集客の受け皿がないから起こる
- [Ⅳ]対策検証編:解決策は沢山検討してきたがそれぞれ問題があって不十分
- [Ⅴ]結論と今後:不十分とか言ってられないので必死にやろう
ここまでの話は行政とサンフレッチェ広島が取り組むべき話。
我々サポーターに出来るのはその経緯を理解し、許容することだけです。
一方、サポーターが積極的に出来ることもあります。
その1つが公共交通機関の積極利用なのですが、なかなか難しい人もいるでしょう。
そこで、1台当たり乗車率を高めていくことをもっと強く意識してはどうでしょうか。
身内同士で乗り合わせていくだけでも車の台数減少に繋げることが可能です。
また、すでに みきゆす (@mikiyus)さんが取り組まれていることをご紹介したいと思います。
初めて耳にされる方も多いかもしれませんが、団体観戦プランと言うものがあります。
詳しい話は、下記のページ等で確認して頂ければよく分かると思います。
クラブとしてももっと利用を促進して欲しいですし、サポーター側から利用しやすくなるような提案を考えてみるのも面白いと思います。
クラブにマンパワーが足りないというのであれば近くに住むサポーター同士で協力してアストラムライン周辺の駐車場情報をデータとしてまとめるのも面白いでしょう。
アストラムライン周辺に駐車場があればもう少しパークアンドライドも進むでしょうから。
みんなで一丸となって団結して力を結集して、アクセス問題に挑戦していけたらと思います。
長くなりましたが以上です。
お付き合い頂けた方は本当にありがとうございました。
少しでもアクセス問題について参考になったのであれば幸いです。
*1:現在はブログを移転されている。新ブログはSANFPIT。
*2:徒歩、自転車、自動二輪、団体観戦プラン(バスツアー)、キスアンドライドなど。これらに関しては今回の話から逸れるので割愛。
*3:テニスコート裏にも80台分あるが、一般による利用が多いことと、サンフレッチェ広島もこの駐車場を紹介していない(利用して欲しくないということ)ため割愛した。広島広域公園(エディオンスタジアム広島)《公益財団法人広島市スポーツ協会 2016年9月7日閲覧》。
*4:もとの画像からテニスコート下臨時駐車場を削除し、第Ⅲ期南臨時駐車場を追加した。また、第Ⅲ期臨時駐車場を第Ⅲ期北臨時駐車場とあらためた。
*5:それまでは大町駅からJR可部線に乗り換える形だったが、便数の関係などから接続が悪かった。参考:白島新駅設置の取組状況《広島市 2016年9月7日閲覧》。
*6:37分あれば広島駅からJRで東に行くと西条駅まで。西は宮島口駅を通り越して大野浦駅まで行くことが出来る。県外で例えると、大阪環状線一周とほぼ同じくらい。山手線でいうと半周分よりは長い(東京~新宿間が約33分)。
*7:本通駅から広域公園前駅までは大人片道480円。サンフレッチェ応援乗車券を使えば一日乗り放題で620円。参考:普通運賃及び駅間距離のご案内《広島高速交通株式会社 2016年9月7日閲覧》。
*8:2014年まで広域公園前駅からスタジアム前まで無料シャトルバスを運行していた。近隣の駐車スペースがなくなったことから2015年から廃止されている。参考:第14回サポーターズカンファレンス議事録、12月6日(土)J1リーグ第34節『中国電力・中電工 スポンサードゲーム』vs.ベガルタ仙台 ホームゲームイベントのお知らせ《サンフレッチェ広島 2014年12月4日付》、3月7日(土)明治安田生命J1リーグ1stステージ第1節『エディオン スポンサードゲーム』vs.ヴァンフォーレ甲府 ホームゲームイベントのお知らせ《サンフレッチェ広島 2015年3月6日付》。
*9:アストラムライン延伸の事業化について(道路交通局都市交通部)《広島市 2016年9月7日閲覧》。
*10:その昔、大町駅で折り返すレーンを使った特殊な方法で急行列車が走っていたこともある。急行便は本通駅・広域公園前駅間を約25分で走っていた。当時、平日4便・休日1便が運行していたが利用者が少ないことから2004年に廃止された。参考:広島高速交通(株)の経営健全化計画の策定に向けた提言《広島高速交通(株)経営健全化計画策定検討委員会 2003年3月17日 6ページ》、3月20日 アストラムが もっと便利になります《広島高速交通株式会社 2016年9月7日閲覧》、研究冊子「葵」第262号 「緩急接続」《京都大学鉄道研究会 14ページ》。
*11:ここでいう路線バスは、Aシティ中央に停車する62番線・63番線のことである。これらの他に、広域公園前駅(広島修道大学入口)に停車する60番線・61番線などを利用する方法もあるが、それならアストラムラインを利用した方がいい。参考:広島市西部エリア:西風新都線(西風新都方面)《広島電鉄 2016年9月7日閲覧》。
*12:一般的なバスのキャパシティは70人~80人。アストラムラインは286人。参考:よくあるご質問(FAQ)《広島高速交通株式会社 2016年9月7日閲覧》。
*13:調査は2004年から実施・公開されている。なお、2004年、2005年、2008年が50分台、2013年、2014年は70分台、これ以外の年は60分台だった。リーグ平均を下回ったのは2004年、2005年、2008年の3年間のみ。
*14:例えば、駐車場が足りない(ストック問題)ことを原因として機会損失が発生するケース等も考えられる。
*15:2007年シーズンは約50%、2008年シーズンは約60%、2010年シーズンは約44%、2011年シーズンは約48%。すべてサポーターズカンファレンスの議事録(第3回、第4回、第7回、第8回)より。
*16:広島高速4号線を普通車で往復すると820円。サンフレッチェ応援乗車券は往復大人620円なので2人以上で行ったら車の方が安い。
*17:遠回りをして北にある広島西風新都ICを利用するという方法もあるが、時間とお金が余計にかかってしまうため敬遠されがち。
*18:第5回サポーターズカンファレンス議事録。
*19:2012年の第8回サポーターズカンファレンスでも同様の説明があった。
*20:各年のリーグ戦平均観客数は、2007年が11,423人、2008年が10,840人、2010年が14,561人、2011年が13,202人、2015年が16,382人だった。これにそれぞれ割合を乗じると、2007年が5,711人、2008年が6,503人、2010年が6,407人、2011年が6,337人、2015年が5,733人となる。
*21:事業年度は平成25年度~平成32年度(予定)とのこと。参考:都市基盤施設の整備《広島市 2016年9月7日閲覧》。
*22:なお、広域公園前駅からの無料シャトルバスが廃止されるより以前に大塚駅からシャトルバスを出してはどうかという提案があった。その際は、内部で検討したものの終点ではない場所からシャトルバスを出すことは告知浸透の観点から難しいのではないかという話だった。第8回サポーターズカンファレンス議事録。