サンフレッチェ広島 2017年通信簿(その三) ~クラブ(人)は変わっていくものだろ~
通信簿その三のテーマは集客。
2017年シーズンはそれまでとは異なる集客上の取り組みがありました。
そうした変化を中心に確認していくことにしましょう。
[Ⅰ]入場者数…【もう少し頑張りましょう】
それではまず入場者数について確認しておきたいと思います。
2017年シーズンはリーグ戦の入場者数が約23万8千人と6年ぶりに25万人を割りました。
入場者数の躍進が好成績に支えられていたということが改めて浮き彫りになった形。
ポジティブな話題は、史上10クラブ目のJ1通算入場者数500万人突破くらいでしょうか*1。
入場者数が減少傾向である理由としてはいくつか考えられます。
- そもそも2012年以来の好成績で入場者数が増えていたので元に戻っているだけ
- 代替物の普及(カープやドラゴンフライズなど)
- 品質の低下(成績の悪化、駐車場の減少)
他にもあるかもしれませんが、クラブとして対処できるのは3番目の要因くらいです。
実際に、2017年はそれまでとは違う、変わった施策をいくつも実施しています。
もちろん失敗もありましたし、成果をあげられなかったのも事実です。
ただ、どのような集客努力をしていたのかはきちんと認識しておきたいと思います。
一口に集客対策といっても様々な対策があります。
本稿ではその中でも変化に主眼を置き、「スタジアム運営」、「試合企画」、「チケット販売」、「年間パス販売」、「アクセス対策」の5つに分けてチェックしていきたいと思います。
[Ⅱ]2017年の変化=スタジアム運営
2017年実施した集客対策として最も大きなものは再入場全面解禁です。
これまで再入場の権利は年間パス保有者限定の特典。
このような仕様にしている理由は年間パスに付加価値を付けるためと説明されていました*2。
他方で、一度入場すると出られないのでは屋台や屋外イベントを楽しめません。
再入場が解禁されたことで飲食関係などプラスの影響があったのではないでしょうか*3。
また、スタジアム外のおまつり広場が改善されたことも特筆すべき点です。
今年の【おまつり広場】改善点
— tylor (@hawawatime) 2017年2月24日
中央に大きなスペース確保
机と椅子があり飲食可能。
ステージ前には観覧用の椅子設置
去年より快適に過ごせそうです #おいでよエディスタ#sanfrecce pic.twitter.com/4xccw6cAtW
まだまだ全然足りていないとはいえ、飲食スペースは格段に広くなりました。
イベントの観覧もやりやすくなっていますし、まさに求められていた改善です。
今後の課題は、屋台に並ぶとその行列が中心に向かって伸びてしまう点でしょうか。
託児所の受付が場外に移動し、入場前に利用できるようになった点もナイスな改善点です。
むしろ再入場が解禁される前からやっておくべきだったのでは…という想いもありますが。
《サンフレッチェ広島より》
最後に、スタジアムのスロープ下を「サンチェひろば」として展開し始めました。
《サンフレッチェ広島より》
従来はアウェイスタンド寄りだった「サンチェふわふわドーム」などをスロープ下に移動。
子どもたちが遊べる場所を1カ所に集約したことで分かりやすくなったのではないでしょうか。
また、結果としてスケートボードの利用者を間接的に排除することに成功しました。
言葉は悪いですが、歩行者にとって非常に危険でしたので棲み分けができて良かったです。
他方で、それまでは大行列だった重富のビールスタンドが有効活用できなくなりました。
スロープ下まで移動することは非常に面倒に感じるもので、わざわざ降りる人は少ない。
降りるだけなら構わないとしても、もう一度山を登るのはしんどいのです。
というか登っている間に買ったビールの泡が飛ぶのは重大な欠陥ではないでしょうか。
テーマ5 スタジアムイベントについて(久保雅義 企画広報部長)
《第15回サポーターズカンファレンス議事録》
【試合会場の雰囲気づくりについて】
このたび、スロープ下からのにぎわいを創出したいと考えたのは、広域公園駅を降りてからスタジアムに上がるまでの坂道を長いと感じているからです。それを考慮して、下の方から少しでもサンフレッチェ広島のスタジアムに近づいてきたという雰囲気を創出したいと思っています。
趣旨は分かりますが、結果としておまつり広場とサンチェ広場は分断されてしまいました。
メリットもある一方で、その2カ所を繋ぐにはあまりにも距離的(傾斜的)ハードルが高い。
この点は、2018年シーズンに向けた大きな課題として残っています。
[Ⅲ]2017年の変化=試合企画
全ての企画を取り上げることはできませんので3つだけ印象的なものをピックアップします。
1つ目は、ここ数年恒例となっているレディースデー。
2017年シーズンは「サンフレガールズフェスタ2017」と題して沢山企画しました。
http://www.sanfrecce.co.jp/0624_girls/www.sanfrecce.co.jp
風船はみんな山へ飛んでいった…。 pic.twitter.com/dasFOQ9Mst
— ちょっつ@勝ち点0 (@chottu_LB) 2017年6月4日
ハーフタイムにバルーン風船を飛ばすなどこれまでにない企画が多かった印象。
是非来年も意欲的な企画に取り組んで欲しいなと思います。
先程紹介した「サンチェひろば」で今夏はビアガーデンを開催していました。
重富様のビールを絡ませた企画として非常にアリです。
サンフレビアガーデンはこんな感じです🤗 重富ビールも飲み放題ですよ~🍻 試合前に食べて飲んで、気分アゲアゲでいきましょう↗️↗️↗️ #sanfrecce pic.twitter.com/FWPmxQXT84
— サンフレッチェ広島 公式 (@sanfrecce_SFC) 2017年7月30日
ただ、やるならもう少し本気度が欲しかったというのが正直な感想。
価格面で強気なのですから、ビール以外の商品などにも力を入れなくては続きません。
最後に、今年一番反響が大きかった企画は八天堂様とのコラボ企画でしょう。
クリームパンが限定商品ということもさることながら保冷バッグも限定品。
初日の川崎戦は長蛇の列となり、開始50分で500個が完売する驚異的な売れ行きでした*4。
こういう魅力的なコラボ企画は訴求力を高めるので今後も頑張って欲しいですね。
[Ⅳ]2017年の変化=チケット企画
2017年はクラブ創立25周年ということもあってチケット企画も充実していました。
青春ペアシートやスタチケ、カープコラボチケットに関しては2016年までとほぼ同じ*5。
《サンフレッチェ広島より》
新しい企画としてはマリノス戦などで販売されたテーブル付きシート*6。
飲食にもってこいですし、嬉しい人も多いのではないでしょうか。
《サンフレッチェ広島より》
また、レイソル戦は4月1日=エイプリルフールだったこともあって森山あすかさんが出演*7。
それに因んで「うっそ~~!!運だめシート」を販売しました*8。
《サンフレッチェ広島より》
そして2017年はアンジュヴィオレ広島・広島ドラゴンフライズとのコラボもありました*9。
デザインが非常にいいのでカープ同様継続できたらいいなと思っています。
《サンフレッチェ広島より》
これらの他に夏休み親子特別体験ペアチケットなども発売していました*10。
また、県内全ての新小学一年生を対象にした無料観戦パスポートを交付しました。
広島県内の新小学1年生への無料観戦パスポート交付について
《サンフレッチェ広島 2017年3月21日付》
趣旨
小学校入学により新たなライフステージに立ち、様々な経験を積んでいく多感な時期に、プロサッカーを生で観戦することを通じて、子供たちの心身の成長に寄与すると同時に、サンフレッチェ広島を通じて多くの広島県民の方にスポーツに触れていただくことを目的に本事業を実施いたします。
対象
2017年4月に小学1年生になる児童約25,000人(広島県内全ての小学校)
内容
2017年にホームスタジアムで開催されるリーグ戦及びカップ戦を無料観戦できるパスポートを申込制により交付します。
・席種:バックスタンド自由シート
従来は無料招待券を絞る傾向だったことを考えると大きな変化です*11。
ただ、創立25周年という題目にしているため実験的なものと捉えるべきかもしれません。
チケットの種類だけではなくチケットの販売方法でもいくつか変更点がありました。
それが、オンライン販売での会員割引対応と、団体観戦プラン申込の簡素化。
【サンフレッチェクラブ会員のみなさまへ】オフィシャルホームページ「オンライン販売」より、会員割引購入ができるようになります!
《サンフレッチェ広島 2017年1月26日付》
サンフレッチェ広島では、2月18日(土)10:00よりオンラインにて会員割引販売を開始いたしますのでお知らせいたします。店頭に行かなくても、クラブ公式オンラインチケットページ(Jリーグチケット)にて、会員割引価格でチケットをお求めいただくことができるようになります!購入には「Jリーグチケット利用登録」と「ワンタッチパスID設定」が必要となります。お客様の「ワンタッチパスID」に関しましては、2月10日以降お届けの新カードに添付しておりますのでご確認ください。
団体観戦プランのお申込が簡単になりました!!
《サンフレッチェ広島 2017年10月16日付》
サンフレッチェ広島団体観戦プランのお申込みがとっても簡単・便利☆になりましたのでお知らせいたします。以前はFAXのみでのお申込み受付でしたが、この度携帯やPCから受付可能なメールでの受付となりました。15名以上でご観戦希望の方は、ぜひこの機会にご利用ください!
どちらも今まで対応できていなかったのか…という驚きの方が強いです。
まだまだチケット販売1つとっても改善点は山盛りなのかも知れません。
[Ⅴ]2017年の変化=年間パス販売
年間パスの販売数はクラブにとって重要な課題であることは以前も述べました。
そのためクラブは様々な付加価値を付けることで年間パスの販促を行ってきています。
価格面だけでなく、優先入場や再入場の権利などがその特典の代表例です。
しかし、前述したように2017年に特典の1つである再入場の権利を解禁しました。
これはクラブが年間パスに別の付加価値を付けることに切り替えたともとれます。
この傾向は数年前から見られており、例えば、ユニフォームの最速先行予約や、ふれあいイベントへの参加権・プレシーズンの新加入会見への招待などがありました*12。
同様に、2017年はミキッチ選手のサイン会も年間パス所有者限定として優遇策を実施*13。
シーズンパス購入者限定イベント、ミキッチ選手サイン会をマリホ水族館で行いました✨ #sanfrecce pic.twitter.com/YawFG24ZQA
— サンフレッチェ広島 公式 (@sanfrecce_SFC) 2017年12月3日
年間パスの付加価値を増やしていくことは販売促進上、重要なことです。
とはいえ、この取組はまだまだ道半ばなのだろうと思います。
個人的には、優先入場のメリットをもっと前面に出せないかなと思っているのですが。
[Ⅵ]2017年の変化=交通アクセス
最後にスタジアムの交通アクセスの改善への取組について述べなければなりません。
以前、広島広域公園のアクセス問題がどこに起因するものかの分析を行いました。
分析結果については上記投稿を見てください(但し長い)。
この投稿後に長距離シャトルバスの試験運行が開始されたのはご存じだと思います*14。
そして、2017年シーズンは長距離シャトルバスが本格運行されることになりました*15。
昨年から試験運行していた直行バスが今シーズンから本格運行。昨年との違いは下記の点。
— awayisum (@awayisum) 2017年2月15日
・紙屋町便が廃止(ただし復路は広島駅便で下車可能)
・商工センター便が廃止
・広島駅復路便を創設
・料金設定の変更(子供料金あり)
前掲投稿にもあるように長距離シャトルバスにはそれなりのリスクとコストがかかるもの。
それにもかかわらず運行を決定したことにクラブ側の危機感が窺えます。
さらにクラブは遠距離パークアンドライドも実行に移しました。
http://www.sanfrecce.co.jp/park_ride/www.sanfrecce.co.jp
それまでは採算面などから躊躇っていた改革がここに来て一気に進んだようです。
特に西風新都エリアの売却が進んでいることは抗いようのない事実なのでしょう*16。
広島広域公園のアクセスが致命的な状態となる前に対処するのは正しい判断だと思います。
上記の他にも森崎浩司アンバサダーと行く貸切アストラムラインで観戦という企画*17。
コカコーラの協賛を得た公共交通機関での来場啓発実施などにも取り組みました*18。
貸切トラムでアンバサダーとエディオンスタジアムへ行こう!企画、無事、終了しました✨ 本通りから皆さんと楽しい時間を過ごしながら、エディオンスタジアムに到着‼️ ご利用いただいた皆さま、ありがとうございました。#sanfrecce pic.twitter.com/VAsInaClUl
— サンフレッチェ広島 公式 (@sanfrecce_SFC) 2017年9月30日
これらの成果がどれほど出たのかはサポーターズカンファレンスで聞いてみたい話ですね。
[Ⅶ]まとめ
今回は長くなってしまいましたので簡単にまとめておきたいと思います。
サンフレッチェ広島の2017年シーズン入場者数は大幅減でした。
しかし、2016年シーズンまでになかった様々な改善点があったのも事実です。
- スタジアム運営では、再入場の解禁やおまつり広場の改善、サンチェ広場OPEN。
- 試合企画では、レディースデーの拡充や様々なコラボ企画。
- チケット企画では、チケット種類の増加や販売方法の改善。
- 年間パス販売では、再入場特典がなくなった代わりにイベント参加権へシフト。
- 交通アクセスでは、シャトルバスの本格運用とパークアンドライドの実施。
集客という広いテーマで見るとこれほどの変化が1年で起きていたということに驚きます。
叶うならば成績面がこの努力の足を引っ張らないで欲しかったのですが。
それまでは逆に成績面が引っ張ってくれていたので文句も付けにくいところ。
いずれこうした努力で観客を増やし、成績面を引っ張れるようになりたいものです。
次回はグッズ販売とイベント企画について見ていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
*1:2017年シーズンを終了してJ1通算入場者数は511万1896人となった。なお、他の9クラブは浦和、横浜M、鹿島、新潟、名古屋、F東京、清水、G大阪、磐田。J1通算入場者数500万人を突破したのは7月30日のJ1第19節サガン鳥栖戦でのこと。
*2:第14回サポーターズカンファレンス議事録。
*3:年間パスのメリットが1つ失われたことについては後述する。
*5:25周年特別学生割引企画!!4月22日(土)ベガルタ仙台戦限定!!『青春ペアシート』販売について《サンフレッチェ広島 2017年3月7日付》、『SANFRECCE×CARP』コラボチケット抽選販売について!!《サンフレッチェ広島 2017年4月26日付》、8月19日(土)ヴァンフォーレ甲府戦限定!!スタジアム見学会付きチケット『スタチケ』販売について《サンフレッチェ広島 2017年7月26日付》。昨年と違う点は、カープとのコラボチケットのデザインがは全試合共通となった点。
*6:【25周年特別企画】4月16日(日)横浜F・マリノス戦 限定!!テーブル付きシート 販売について《サンフレッチェ広島 2017年3月2日付》。
*7:4月1日(土)柏レイソル戦 おまつり広場『にぎわいステージ』出演パフォーマー&プログラム紹介《サンフレッチェ広島 2017年3月30日付》。
*8:【25周年特別企画】4月1日(土)柏レイソル戦 限定!!「うっそ~~!!運だめシート」販売について《サンフレッチェ広島 2017年3月2日付》。
*9:25周年企画!!5月6日(土)ヴィッセル神戸戦限定!!『サンフレッチェ広島/広島ドラゴンフライズ ダブル観戦チケット』販売について《サンフレッチェ広島 2017年4月7日付》、25周年企画!!5月27日(土)ジュビロ磐田戦限定!!『アンジュヴィオレ広島/サンフレッチェ広島 ダブル観戦コラボクリアファイル付きチケット』販売について《サンフレッチェ広島 2017年4月14日付》。
*10:【25周年特別企画】7月30日(日)サガン鳥栖戦限定“presented by NIKE“『夏休み親子特別体験ペアチケット』販売のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年6月2日付》。
*11:第13回サポーターズカンファレンス議事録。
*12:『2018シーズンパス』WEB申込特典“ユニフォーム最速先行予約”について《サンフレッチェ広島 2017年11月17日付》、「シーズンパス特典 選手ふれあいイベント」参加者募集のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年9月14日付》、『2018シーズンパス早期申込特典』新加入会見ご招待応募のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年12月27日付》。
*13:『ミキッチ選手 握手&サイン会』開催のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年11月25日付》。
*14:【本日、申込締切日!】エディオンスタジアムまでが、“速い☆近い☆快適☆”『広島市中心部・西部方面からの直行バス運行』のお知らせ《サンフレッチェ広島 2016年9月29日付》、《10月29日限定の特別企画》エディオンスタジアムまでが、“速い☆近い☆快適☆”『広島市中心部・西部方面からの直行バス運行』のお知らせ《サンフレッチェ広島 2016年10月14日付》、市中心部・西方面からのバス便運行 レポート《サンフレッチェ広島 2016年10月4日付》。
*15:エディオンスタジアムまでが、“速い☆近い☆快適☆”『広島駅・廿日市方面からの直行バス運行』のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年2月15日付》。
*16:産業用地20年で完売 ひろしま西風新都「セントラルシティ」 50万平方メートル 景気回復や低金利《中国新聞 2017年12月26日9面》。
*17:【公共交通機関利用促進】アストラムライン史上初!貸切トラムでアンバサダーとエディオンスタジアムへ行こう!参加者募集のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年9月21日付》。
*18:【公共交通機関利用促進応援企画】ホームゲームラスト3試合にて公共交通機関での来場啓発実施について ---計27,000本の「いろはす・あまおう<340ml>」配布---【提供】コカ・コーラウエスト株式会社《サンフレッチェ広島 2017年10月19日付》。