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la vie en violette

サンフレッチェとサッカーに染まった日々

なぜ"ACLは罰ゲーム"と揶揄されるのか(2014ACL小括・上)

2014年シーズン ACL Jリーグ

2014年ACLの旅。

サンフレッチェ広島は昨年の経験を活かして見事初のグループステージ突破。
H組1位通過のウェスタン・シドニー・ワンダラーズ相手にホームで先勝。
アドバンテージを活かしたいところでしたが、アウェイゴールに涙をのむ結果となりました。

選手も監督もサポーターもただただ悔しいの一言。
その悔しさはチームへの期待とACLで勝ち上がることへの渇望から生まれてくるもの。
来年はもう1つ上の高さからの景色を見てみたいと切に願います。

そして厳しい日程の中での前半戦、本当にお疲れ様でした。

さて、昨年もACL終了後に1本文章を書きました。
テーマは"本当にサンフレッチェACLでメンバーを落としたのか"というもの。
当時、メンバー構成に言及することなしに謂われない批判が飛び交っていたからです。

 

awayisum.hateblo.jp

 

今年もあるテーマについて簡単ではありますが文章として残しておきたいと思います。

 


 

[Ⅰ]なぜ「ACLは罰ゲーム」と揶揄されるのか

2014年のACLはラウンド16をもって日本勢がすべて敗退する結果となりました。

 

 

2007年の浦和と2008年のガンバ大阪を最後にJリーグ勢は決勝まで勝ち上がれていません。
この状況を揶揄した言葉としてACLは罰ゲーム」というものがあります。

何故このような皮肉が通説のように定着してしまっているのでしょうか。

また、こういった皮肉に対して「罰ゲーム」だというチームは出場するなという非難も見受けられますが、逆に言えば罰ゲームと揶揄されるような状況の解消はACLで日本勢が勝ち上がるための1つの対策となり得るのではないでしょうか。

一般的に、ACLの検証記事は他国リーグとの比較や個別的問題点の列挙が主流です。

 

twitistwit.wordpress.com

gazfootball.com

 

本稿はこれらの切り口とは異なり、揶揄される要因の推論と提言という形で進めていきます。

 

それでは本題に入りましょう。
ACLは罰ゲーム」という言葉の背景には、ACLに出場する方が損をする、あるいはACLに出場しない方が得であるという嘆きが見え隠れしています。

ではなぜ損をしている/得をすると感じてしまうのでしょうか。
考えられる理由としては大きく2つあります。

第一に、コストパフォーマンスの悪さです。
これは、賞金の額に対して大会出場にかかるコストが高いというよく指摘される点です。

第二に、ACL不出場クラブに対する不公平感があげられます。
Jリーグは実力が拮抗しており、強豪と言われているチームでも降格するケースがあります。
その中で出場クラブが不出場クラブよりも多大な負担を強いられているとされる指摘です。

 

この2つの問題を生じさせているのは次の4つの事情にあると考えています。
すなわち、日程、レギュレーション、移動距離、クラブ経営の4点です。
本稿では以上の4つのポイントに着目して検討を進めていきたいと思います。

 


 

[Ⅱ]日程面での負担

まず最初に挙げられるのは日程面の負担でしょう。
ACLがなくとも過密日程だと言われていますが、W杯イヤーの今年はどうだったのでしょうか。

 

https://lh3.googleusercontent.com/LppdAfgMvTDOkMYru14TbdgrLGRvgkZPTI8P0hpTtPcAJF9oKWzwQq-ikHM93rbJM5BsWyJfkqK90pRAKRlNdcsbLGmB8OGjzKkFNdOkqWPw6SjhL2w0SiIQDsTpbT0LE7AI0-VxGtaRbQA_VYrga0ceGe15vVcGtPoGZArJZSPnT4i2f3CxbEMqkQnURlzHPOLv0DIi6RZ3v6eWZmYhV4Y6Qe-fSpT9slrs6YoxKGCNyPs0SxF4HFRwMdKZiMz1ti5R3sIII23L1uo73Gc38KJso6fR2hTnAA_DXRwiIqeGloZNwARtF555-DxftKfcYJWMuLWhtN3IhwaN_1zV-Pg1yPoVKzYqMtAYqQR4n1f_VRrmysGGnjsv1Qep5J2WeNvqKe27XxIF891IfXzOXg67Pw1djx4n9MerrXPqPPRBUvZ4PY57Z15l77JBs25qGS03lfuyUVnxUy8qTsQM5Rel3jx5z1ySCs1ggQHIOk6_grDl0SdGSEHNCjjf_cnivhmTTbwip22rb0Fo7IYt3Q-WobL2lYxWFGBGsAGIahPBo4x_8CNTDyl2kBRkKkrb8JHBUVEhD7b_gYJo2at6MA8vEioSQRi83BWWyUBahvAxEEjOh9vb=w481-h944-no
《各クラブのHPを元に作成》

 

今シーズンはご覧のようなスケジュール。
広島とセレッソ大阪は中2日での戦いを7回も体験しています(ACL不出場クラブは2回)。
中でも、4月11日~5月18日の日程は特に凶悪と言っていいでしょう。

一般的に中2日だとリカバリートレーニングに追われ、戦術的な修正は不可能と言われます。
長距離移動がある場合は、中3日でも1日を移動に費やしてしまうため、より厳しいのだとか。

 

中二日の法則
《イギリスコーチング修行@Loughborough 2013年7月1日付》

これはマラソンと筋グリコーゲンの量(青) そしてグリコーゲン合成(赤)の関係性を図に表したものですが、 この図を見ても回復には3−5日かかっているのが分かります。
またSaltin& Karlsson (1973)の研究では 試合前の筋グリコーゲンの量と試合中の走行距離(特に後半)との関連性がある という研究結果が出ています。
【toto情報】コラム:ACLのアウェイは、記者もサポーターも闘っている。
《J's GOALアーカイブ 2014年4月18日付》

toto的に言えば、アウェイのACLを戦った後、中3日で闘う川崎Fと広島は、相当の疲れが残ると見ていい。中3日といっても、翌日は日本に戻るだけで精一杯。リカバリーなどコンディショニングが優先され、戦術トレーニングがほとんどできない状況だ

 

今シーズンからJリーグは中3日設けるため、土曜固定開催を取りやめることになりました。

 

blog.goo.ne.jp

blog.livedoor.jp

 

この恩恵は非常に大きかったものの、興行的に重要なGW期間中は中2日が連続。
ACLを勝ち上がった3チームは中2日を含む11連戦を戦うことになりました。

ここで1つ指摘されるのは、「勝てば勝つほど日程的に苦しくなる」という点。
ACLのGS(グループステージ)で敗退したマリノスは11連戦ではなく7連戦となっています。
これはACLという大会にどれだけの価値を見出すかにもよりますが、その価値を高く見積もっていなければ、その負担は大きいものに映ってくるでしょう。

なお、ラウンド16を勝ち上がると夏以降さらに過密日程であったことも付け加えておきます。

 

そしてもう1つの問題点は、ACL不出場クラブとの間の日程格差です。
4月23日にACLのGS第6節を戦いましたが、ナビスコカップの予選は開催されていません。
結果論ではありますが、第6節時点で4チームともGS突破の可能性を残していました。

ACLのGS第1戦・第2戦、そしてラウンド16の第2戦も同様にACL出場クラブは試合があるため、中2日・中3日で連戦が続きますが、ACL不出場クラブはそれがありません。

もともとナビスコカップに若手などを起用している場合、否応なくACL出場クラブとACL不出場クラブの間にコンディションの差は生まれてしまうものです。
その差自体は、前述した通りACLという大会ををどう評価するかという問題でしょう。

しかし、そもそも試合を開催しないのでは調整のレベルが段違い。
こういった日程面の格差が不公平感を助長しているのではないでしょうか。

 

[Ⅲ]レギュレーション上の課題

前項で直接的な日程問題について触れました。
続いて間接的な日程問題についても考えてみましょう。

ACLとリーグ戦は両立できない」なんてこともよく言われています。
この1つの要因としてACLとオフシーズンの関係があるのではないでしょうか。

日本サッカーはゼロックススーパーカップで始まり、天皇杯でシーズンを終えます。
そして、天皇杯を勝ち進めば勝ち進むほどオフシーズンは短くなり、その勝者がゼロックススーパーカップに出場するため極端にオフシーズンが短いものとなっています。

ここで、サンフレッチェ広島の直近3年間のオフシーズンを確認してみましょう。

 

https://lh3.googleusercontent.com/rXtNG6Zxfi3Xy4Mjk4WvH66OS8oA2BYexcYAOi7nyNz8pw5u1DUWGUNIJSWC0KRpjecKBOJb6Q-vlozxucMiop6B81m7VEUwCeIKzAf1wRDs9x5bxTYkAz4ZAO_bQ4j-NmzotfWlRiGobzw4sJGYV5LvyVOV1hZ0HLAfqM-TT65Y_QPYmrRVnptcV2O-dRXrD_sDPU5JkGx0Cns9nSFsCL6HMdoW70rM4KcU63N0WByFvjHEvdZTl-pcaO-ebPeKF46ny0d3qq_kDHJBAjbSqH9nFedF54T8iGWTEeiivC1alg-nvzTXx1yfEVSZd8ejlhOKE_I7ukjxq2f5kve-rLvNekyUbvOZ4HhuD0Yzh9ZCXOyUGCz989VgFmC1sZQhTAJOpx32I9f2zPkRzM0fySS4X63753HpO7xlc9Xdvcwejy8-4aVtyQv32yy-qUs6ghIsA_A0p6wHke4JxmeCK1bg7BHiNIKdnJqt2jWKonNptOkFaBANEjlNOu31KL8aYR8SF67b98hBB42JAl9xgTNhLaWhwkNSeeAPHzKyUmPGyozZ6f7mez_xYQkEkiYftSnulbQ8UmgQ9hFySQ0JIMb0-kyIeHpzsO_bip3gAgVNGubUh37t=w960-h720-no
サンフレッチェ広島のHPを元に作成》

 

2012年は一般的なシーズンインをして、リーグ戦で優勝。開催国枠でCWCに出場しました。
2013年はゼロックススーパーカップで開幕。リーグ戦で優勝し、天皇杯は準優勝でした。
2014年は再びゼロックススーパーカップで開幕しています。

ACL出場クラブが全てこのようなスケジュールというわけではありません。
一方で、天皇杯優勝=ACL出場権+ゼロックススーパーカップ出場権である以上、似たような日程になるクラブは毎年最低でも1チームはいることになります。

 

3連覇への土台築く 27日から鹿児島キャンプ
中国新聞 2014年1月26日》

元日に天皇杯全日本選手権決勝を戦った横浜Mとともに、J1チームで最も遅い始動となる。選手の休養を優先し、広島での始動を見送り、いきなりキャンプインする異例のスタート。森保監督は「心身ともにリフレッシュしなければ、効果的な練習はできない。キャンプに入ってからギアを上げたほうがいい」と説明した。

鹿児島では午前と午後の2部練習が基本。コートの大きさを変えながら紅白戦をこなし、コンディションを整えていく。その中で攻守のチーム戦術も確認し、唯一の練習試合となる最終日の鹿屋体大戦で完成度をチェック。実戦形式の練習を増やす宮崎2次キャンプ(2月10~21日)につなげる考えだ。

10人の新戦力の見極め、チームとの融合もテーマとなる。「既存の選手と刺激し合いながら力を伸ばせるよう、いい練習を提供したい。鹿児島で個々の力を見ながら、最終的には宮崎で評価する。昨季の骨格がベースだが、いつでも逆転はある」。競争による底上げを描く。

 

オフシーズンが短いということは当然休息が限られてしまうということ。
また、キャンプ期間が短くなれば新戦力との連携を築き上げるのに苦労するでしょうし、監督が替わった場合などには新戦術を試す期間が足りなくなる可能性があります。

そういった時間を重視すると今度はフィジカルトレーニングのための時間が不足することに。
結果として、負傷の可能性が高まってしまいます。

以上のことから、オフシーズンが短いことはACL出場クラブにとって小さくない負担です。

 

レギュレーション上の話をするならばACL出場権の話も避けては通れません。

現行では、天皇杯優勝クラブがACL出場権を得ることができます。
そして、天皇杯の対戦次第では、リーグ4位にACL出場権が移ることになります。

すなわち、天皇杯の結果次第でACL出場クラブが変わってしまう可能性があるのです。
2010年のサンフレッチェ広島もこの仕様でACL初出場を果たしました。

今年の天皇杯からスケジュールが変更され、元日決勝ではなくなります。
しかし、それでも選手の契約期間を鑑みれば、12月の大会を終えてACL出場権が確定するという仕様は、戦力補強などに大きな影響を及ぼすことになるはずです。
これもまたACL出場チーム特有の負担でありましょう。

 


 

書いていてあまりにも長くなったため前後編で分割します。続きは次回

 

awayisum.hateblo.jp