サンフレッチェ広島 2015年通信簿(後編) ~もあぐれっしぶな一年だったので~
2015年通信簿もやっと終わり。
[Ⅵ]スタジアム…【もう少し頑張りましょう】
さて、2015年を語る上でこの話を避けるわけにはいかないでしょう。
2015年1月に小谷野薫前社長が広島市長選に出馬を表明。
しかし、結果は残念ながら落選。
サンフレッチェ広島のスタジアム運動は一歩後退することになりました。
この件について深く語ると長くなるので割愛します。
ただ、出馬するべきでなかったというのは結果論であり、今現在再びスタジアムの話題が巻き起こっているのはチームの成績に起因すること。
スタジアムに関わる人間の多くに「何かしなくてはならない」という危機感があったということだけはお伝えしておきます。
さて、この広島市長選のあと間違いなく話題は縮減。
その後、広島市・広島県・広島商工会議所・広島県サッカー協会による4者協議が開催されましたが*1、サンフレッチェ広島として動くことはありませんでした。
後日詳しくやりますが、7月の3者協議ではみなと公園優位と報道されます*2。
アクセスの悪い僻地に大規模な複合開発込みのスタジアム。
ファンの思いとは真逆の数え役満のようなスタジアム像ですね。
そんな中、村井チェアマンが来広して街中スタジアムを訴えるなんてこともありました。
チームは勝ちに勝って2005年以降で最多勝ち点を獲得するほどの快進撃。
今年から再導入されたチャンピオンシップも勝ち、CWCでは3位に輝くなど文句の付けようのない成績で一年を終えました。
チャンピオンシップ決勝第2戦でサポーターが掲出した弾幕が話題になり。
市長は「検討を深化させる」とコメントすれば、森保監督らが各メディアでスタジアム建設を訴えるなどスタジアム建設に向かって追い風が吹きました。
blog.domesoccer.jp
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一方、9月には宇品地区のアクセスの検討*3が。
10月にはスタジアムの実現可能性の検討*4が開始されています。
2016年3月には一定の結論を出すという話ですから一刻の猶予もありません*5。
サンフレッチェ広島の久保会長が独自プランを提示するという話もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=Ota9L2hzY5gwww.youtube.com
我々がまずやるべきは改めてスタジアムの話題をすること。
決して押しつけではなく、自分が菊川であれば不快に感じるやり方ではなく。
興味を持ってもらえるよう話すことを意識しなければなりません。
ものすごくハードルは高いですが、時間がないのもまた事実。
歯を食いしばってもう少し頑張りましょう。
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[Ⅶ]その他…【備考欄】
最後に残った項目について簡単に見ていきましょう。
選手個人の話になりますが、2015年は表彰の多い一年でした。
まず、3月~11月の9ヶ月間でベストゴールが4つ生まれました*6。
これらの中でも青山敏弘選手のゴールが年間ベストゴールに選出されています。
https://www.youtube.com/watch?v=1-l4b162sNswww.youtube.com
ノミネートも含めれば広島勢のスーパーゴールが目立った一年でした。
そもそもとしてゴール数が多かったという側面もあるのですけど。
水本裕貴選手がフィールドプレーヤーとして127試合連続フル出場という偉業を達成*7。
J1連続フルタイム出場の記録は最終的に137試合まで伸ばしました*8。
佐藤寿人選手は12年連続2桁得点とJ1通算最多得点に並ぶ記録を達成*9。
Jリーグ史に残る偉大な記録を積み上げています。
また、浅野拓磨選手は森崎和幸選手以来となるヤングプレーヤー賞を受賞*10。
MVPには青山敏弘選手が、最優秀監督賞には森保一監督が選ばれ、フェアプレー賞高円宮杯は2012年から4年連続の受賞となりました*11
Jリーグアウォーズでは森崎和幸選手が優秀選手賞から漏れたり、林卓人選手がベストイレブンから漏れるという事態にざわついた一方で、CWCのマゼンベ戦において森崎和幸選手がMOMに選ばれたことに歓喜するなんてこともありました*12。
選手個人の話から離れて2つほど変わった点について述べておきます。
1つ目は会員特典の入場引換券の仕様変更。
引換券(従来) | 交換対象(従来) |
---|---|
引換券(大人)1枚 | バックスタンド自由シート(大人)1枚 |
引換券(大人)2枚 | SA指定席 1枚 |
引換券(小中高)1枚 | バックスタンド自由シート(小中高)1枚 |
引換券(追加) | 交換対象(追加) |
引換券(小中高)2枚 | バックスタンド自由シート(大人)1枚 |
従来にはなかった小中高引換券2枚でバックスタンド(大人)に交換可能になりました。
引換券を余らせがちだった人には朗報。
逆に大人引換券をバックスタンド(小中高)2枚に交換できてもいいように思います。
人数が増えるので、大入りの試合では難しいかもしれませんが。
2つ目として、サポーターズカンファレンスの申し込み方法が変わりました。
それまではハガキに必要事項を記入して申し込む形でしたが、ハガキに加えてオンライン対応もしてくれるようになりました。
メールの送信エラーなどのトラブルもありましたが良い変化でしょう。
[Ⅷ]2016年のシーズンの展望(的な何か)
2015年は色々な意味で激動の一年でした。
チームは主力が移籍し、下馬評の良くないシーズンで見事優勝。
過密日程の中で「2チーム分の力」があることを証明しました。
クラブの方でも社長交代と強化部の人事異動が起こりました*13。
人が変わる中でもしっかりと成績を残す。
チームとしてもクラブとしてもある程度できた一年だったように思います。
一方でクラブ運営・経営の方では物足りない点もありました。
2015年はプレスリリース数が非常に増え、情報発信がよくできていたと思います*14。
ここにもあるように、公式サイトだけでなくFacebookやTwitter、LINEアカウントも運用しており、インターネット上の情報発信は積極的にできています。
一方で、2013年~2014年はできていた決算情報の開示*15、クラブライセンス*16に関しては情報発信がまったくありませんでした。
スタジアムのことでデリケートな状況なのは理解できなくはないです。
しかし、クラブとしての現状をきちんと伝えることは続けてもいいのではないかと感じます。
また、2015年度の当初目標は2000万円の黒字でした。
第13回サポーターズカンファレンス
《サンフレッチェ広島HP 2015年1月17日》
【経営面について】
ただし、賞金の選手の手取り分や優勝記念グッズの粗利等を勘案すると、優勝効果を除いた当期利益はずっとトントンという状況には変わりはありません。2015年度の経営状態は結構、予断を許さない状態にあると思います。プロチームの編成上は選手・スタッフの基本給合計額が重要となりますが、この基本給の合計額は2012年度から2013年度にかけてはプラス5千万円、2014年度はプラス9,000万円とかなり積み上げてきています。チーム成績が上位を続ける中で選手の獲得以上に引き留めにも資金がかかります。今年は五輪予選等の年代別代表の招集も多く予想されますので、今年はACLがないとは言ってもチーム陣容を落とす訳にはいきません。2015年度の予算上の基本給合計額は、さらにプラス5,000万円程度を想定しています。コスト削減等を引き続き行っても当期利益2,000万円前後の際どい予算になろうかと思います。
ここまでやってもおそらくJ1で10 位くらいの人件費に過ぎないのがつらいところですが、これで2015年度に黒字が達成できれば、クラブ財政としては相当に自信になると思います。私はクラブスタッフも選手同様に頑張ってくれると思います。皆さんもご来場及びグッズ購入で、友達を巻き込むなどぜひご協力ください。また、今年のレプリカユニフォームも昨年秋に既に1万枚発注していますので、昨年のような売れ残りが出ないように、何卒よろしくお願いします。
これが実際には1億4千万円の黒字ということになりました。
安定経営さらに努力 織田社長に聞く
《中国新聞 2016年1月10日16面》
―リーグ優勝とクラブワールドカップ(W杯)3位などの好成績で15年度の収入は過去最高になりそうです。
森保監督以下、スタッフと選手の頑張りのおかげ。約35億6千万円の見通し。黒字は1億4千万円くらいになりそう。ただし、賞金(5億5千万円)に加え、シーズン終盤のテレビ放映権の収入などを除くと30億円に届かない。さらにチャンピオンシップの収入などを除けば、前年度と同じ28億円規模。経営の実力としてはまだ厳しい。
黒字幅が増えたのなら良かったのではないかと思われるかもしれません。
しかし、前編でご説明したように今年は賞金ラッシュに湧いた一年でもありました。
クラブの取り分は4割ですので約2億円がクラブの臨時収入だったことになります。
黒字額が1億4千万円ですから、賞金がなければ単純計算で6千万円の赤字。
これにCSの入場料収入やグッズの売り上げが入ってきているはずです。
つまり、本来の赤字幅はもっと大きかった可能性があるのでしょう。
確かに社長交代という突発的な事態はありました。
外部要因としてはカープの黒田復帰で報道が過熱したこともあります。
しかし、安定経営のためにはチームの成績に頼らない黒字達成を目指さなければなりません。
2016年は優勝効果の残る一年となるでしょう。
この優勝という特需を背景に経営基盤をさらに確固たるものにしていくこと。
それが2016年目指すべきものだと思います。
その経営基盤を確固たるものにする作業の中にスタジアムも入ります。
チームとしては今度こそという思いの強いACLに再び挑むことに。
経営も成績ももあぐれっしぶに取り組む必要があります。
《サンフレッチェ広島HPより》
つまり、2016年は「挑戦」の年となるわけですね。
お後がよろしいようで?
長くなりましたが2015年通信簿は以上です。
何とかシーズン前に片付けることができて良かった…。
お付き合いいただきありがとうございました。
*1:サッカースタジアム建設、半年めど候補地決定へ 広島県など4者会談《産経ニュース 2015年1月14日付》
*2:サッカースタジアム建設 広島みなと公園が優位 知事ら一致、年度内に結論《産経ニュース 2015年7月23日付》
*3:宇品地区交通対策検討業務(公募型プロポーザル)《広島県 2015年9月17日付》
*4:【公募型プロポーザル】サッカースタジアムに係る事業の実現可能性調査業務《広島市 2016年2月9日閲覧》
*5:広島市/3月めど候補地絞る/サッカー場/複合開発も検討《建設通信新聞 2016年1月9日付》
*6:佐藤寿人選手(3月月間ベストゴール)、青山敏弘選手(6月月間ベストゴール)、浅野拓磨選手(9月月間ベストゴール)、柴崎晃成選手(10月月間ベストゴール)。
*7:広島水本、J1新記録だ127戦連続フル出場《日刊スポーツ 2015年5月17日》
*8:広島DF水本の“鉄人”記録が途絶える…連続フル出場は137試合でストップ《サッカーキング 2015年8月12日付》
*9:広島FW佐藤寿人が12年連続2ケタ得点…プロ入り16年目で偉業達成《サッカーキング 2015年7月29日付》、佐藤寿人がJ1通算最多得点タイ記録達成…中山雅史に並ぶ157ゴール《サッカーキング 2015年11月22日付》。
*10:浅野拓磨選手 ベストヤングプレーヤー賞受賞のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2015年12月8日付》
*11:Jリーグアウォーズにて、サンフレッチェ広島のチームと各選手が表彰されました!《サンフレッチェ広島HP 》
*12:FIFA Club World Cup Japan 2015 - Matches - TP Mazembe-Sanfrecce Hiroshima《FIFA.com 2016年2月10日閲覧》
*13:足立 修(あだち おさむ)強化部長就任のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2015年3月1日付》、佐々木直人氏 ユースダイレクター就任のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2015年5月4日付》
*14:例えば、以前から行っているエリア招待事業の告知をしっかりとできるようになっていた。サンフレッチェ広島ホームタウン活動「エリアご招待」事業実施日程のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2015年2月28日付》
*15:「株式会社サンフレッチェ広島 第21期の決算数値の報告」について《サンフレッチェ広島HP 2013年4月12日付》、「株式会社サンフレッチェ広島 第22期の決算数値の報告」について《サンフレッチェ広島HP 2014年4月10日付》
*16:2014シーズン クラブライセンス交付のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2013年9月30日付》、2015シーズン J1クラブライセンス交付のお知らせ《サンフレッチェ広島HP 2014年9月30日付》