サンフレッチェ広島 2017年通信簿(その一) ~クラブ(人)は変わっていくものだろ~
あけましておめでとうございます。
本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
本シリーズも2013年にスタートして5年目となりました。
毎回導入で「J's GOAL今年の漢字」を使っていたのですが、今年はなかったようです。
この企画は2009年から続いており、気に入っていただけに少し、結構残念*1。
そこで誠に勝手ながら2017年の今年の漢字を選んでみました。
《J's GOALの今年の漢字を加工したもの》
2017年の漢字を1つ選ぶなら「変」が最もふさわしいのではないでしょうか。
成績だけでいえば「崩」や「留」を候補に挙げる方も多いのではないかと思います。
ただ、2017年は成績だけでなく色んなことが「変」わった1年でした。
本シリーズでは「変」わったことを中心に2017年シーズンを振り返っていきます。
変化に注目した結果、例年以上に文量が多くなっている気がしますがご了承下さい。
それではよろしくお願いします。
※なお、本記事に第16回サポーターズカンファレンスの内容は含まれておりません。
[Ⅰ]2017年シーズンの成績…【もう少し頑張りましょう】
大会 | 成績 |
---|---|
J1リーグ | 15位 |
ルヴァンカップ | プレーオフ敗退 |
天皇杯 | ベスト16 |
トヨタプレミアカップ2016 | 優勝 |
上記の通り、2017年シーズンはJ1残留を争う厳しい1年となりました。
最終的な順位は15位で、16位の甲府との勝ち点差は僅かに1というギリギリの残留。
勝ち点の推移をグラフにしてみましたが甲府をよく躱せたなと感心しました。
12節~19節あたりの停滞から脱してくれたヨンソン監督の手腕を手放しで賞賛したいです。
余談ですが、現在の18チーム制となってから自動残留の最小勝ち点は2016年の新潟で30。
勝ち点33での自動残留はこれに次ぐ少なさ。本当によく残留できましたね。
[Ⅱ]2017年の変化
今回のテーマが「変」ということで、成績に関する2017年の変化をまとめてみました。
①2017年の変化=選手・監督・スタッフの入れ替わり
さて、2017年シーズンにおいて何より大きく変わったことは森保氏の退任です*2。
2012年に難しいクラブ状況で監督を引き受けてくれた上に、5年半で3度の優勝。
感謝以外に何を伝えればいいのかというくらい広島に沢山のものをもたらしてくれました。
クラブは、森保監督の後任としてOBのヤン・ヨンソン氏を招聘しました*3。
ヨンソン監督はそれまでの特異なサッカーからモダンなサッカーにシフトチェンジ。
ギリギリだったとはいえ、最終節を残して残留を決めた手腕は本当に見事でした。
当初は長期間任せるつもりだったようですが、クラブはシーズン終了後に監督交代を決断*4。
FC東京や甲府で指揮を執った城福浩氏を招聘することになりました*5。
さらに森保体制を支えた横内ヘッドコーチ、下田GKコーチ、松本フィジカルコーチも退団*6。
2017年シーズンのスタッフは中村伸コーチを除いて総入れ替えとなりました*7。
また、中心選手だった塩谷司とミキッチが2017年にチームを去ることになりました*8。
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3度の優勝の立役者でもあるお二人の今後のご活躍を祈念いたします。
森崎浩司・佐藤寿人との別れと合わせてクラブが変革期にあることを印象づける話題でした。
②2017年の変化=シュート決定率の低下
では、どうしてこれほどまでに低迷するような事態となってしまったのでしょうか。
データ分析を集計したところ、次のような問題点があったと指摘されています。
【Jリーグ】2017年のJ1リーグをデータでまとめてみました ~チームスタッツ編~
《サッカーをデータで視てみよう 2017年12月13日付》
【図5】決定率 × シュート到達率の散布図
これまでは、パス→ボール保持→攻撃→シュート、という各プロセスにフォーカスして2軸で見てきましたが、図5はシュート→ゴールという仕上げの部分についての可視化。これは、18チームそれぞれにバラけました。優勝を果たした川崎フロンターレはシュート到達率→決定率の効率においても文句なくトップ水準。精度高いパスワーク、効率的なアタッキング、ゴールを陥れるクオリティと攻撃のすべての過程で高いパフォーマンスを見せたと言えそうです。この可視化で右下に沈んでいるのがサンフレッチェ広島でして、広島が今季苦しんだ要因もここにあろうかと。シュートまでのプロセスでは、図4までで見てきた可視化の通り、浦和や川崎とほぼおなじ水準で来ていたかと思うのですが、肝心要の「決定率」が付いてこなかった...シーズン折り返しのレビューでも言及しましたが、ここがボトルネックとなってしまったことが今季不調に陥った最大の要因でしょう。
過去6シーズンの比較で見てもこの事実は明らか。
この変化が成績に大きな影響を与えたことは疑いのない事実でしょう。
(もちろん他にも要因があるでしょうがここではシュート決定率の話に絞ります)
ただ、一概に「決定率が低かった」と言っても色々な要因が考えられます。
相手の守備を崩せずに無理なシュートが多かったのか、そもそもシュートが下手だったのか。
一目瞭然ですが、アンデルソン・ロペスのシュート数が群を抜いています。
表にはありませんが、90分あたりのシュート数でも他を寄せ付けていません*9。
その一方で、アンデルソン・ロペスのシュート決定率は8.5%と低い数値を示しました*10。
ここで、J1のシュート数ランキングを作って比較してみました。
このように、アンデルソン・ロペスのシュート決定率が突出して低いわけでもなさそうです。
つまり、特定の個人ではなくチームとしてシュート決定率が低かったということでしょう。
以上のことから、チーム全体のシュート決定率が低かったこととシュート決定率の低いアンデルソン・ロペスにフィニッシュを依存したことが成績低迷に影響していると考えられます。
また、関連して1トップに入った選手のシュート数が少ない点も気になります。
換言すれば、FWにピーター・ウタカのような強烈な選手を置けば解決するのでしょう*11。
ただ、そういった補強をしないのなら選手の入れ替わりだけで解決する問題ではありません。
2018年シーズンに向けた大きな課題として受け止めるべき問題です。
③2017年の変化=プレシーズンの動き
少し話が変わりますが、プレシーズンのスケジュールにも変化がありました。
2016年シーズンまでは基本的に鹿児島キャンプと宮崎キャンプの2つで調整するスケジュール。
それに対して、2017年シーズンは鹿児島・宮崎キャンプに加えてタイキャンプを実施*12。
さらに、タイで開催されたトヨタプレミアカップにも招待を受けて出場しました*13。
《サンフレッチェ広島より》
また、2005年以来となるプレシーズンマッチも開催されました*14。
トータルして非常に移動の多いプレシーズンだったのではないかと思います。
さて、キャンプの話題に関連して京都の説明会の中で気になる指摘がありました。
京都サンガF.C.現状説明会
《京都サンガ 2017年9月16日開催》
野口)次の準備段階についてですが、鹿児島キャンプですけども、毎年、霧島市で行っていましたが、今年は異常にグラウンドが硬く、腰痛を訴える選手が続出し、その他のケガも多く出ました。それもあり、フィジカル強化を行うキャンプであったんですが、ケガ人が多く出たため、2回練習を1回に減らして調整していく形になりました。
山中)実際に、私も3日間ですがキャンプに帯同して、これはあかん、と思いまして、大黒選手や闘莉王選手と話をしたんですが、ここのグラウンドでやり過ぎると、みんな故障してしまう。城陽に帰って上げていくしかない。というのが二人の共通した意見でございました。
(中略)
山中)私、回答できるのが一つあります。グラウンドの件でございますが、鹿児島で、実はご存知と思いますが、一昨年までは硬めではあっても、そんなに硬くはなかったんですが、ご存知のとおり去年桜島が何回も噴火しまして、火山灰は水を含みますとコンクリートのみたいに硬くなるんですね、その後、スパイクなどでガンガンやればあれだったのかもしれませんが、冬芝の状態で、青々した状態ではなかったので、それもできなったということで、ただ他に変えますと明言はできないですけれども、少なくとも今年キャンプに使ったピッチ使いません。それは私の指示で今、担当が動いてくれまして、実際に変更するか否かは別として、他の候補地をすでに選定済みです。
サンフレッチェ広島も京都と同じ霧島市国分運動公園で1次キャンプを行っていました*15。
そして、実際に開幕前後に選手の離脱が相次いだことは事実です*16。
ただし、京都の説明する問題があったとしてもそれが直接影響を及ぼしたかは分かりません。
ただ単に、寒すぎた影響の方が大きかったかもしれませんし。
また、仮に因果関係があったとしてもこれを回避するのは容易ではないとは思います。
何はともあれ2018年シーズンは霧島市でのキャンプを回避しています*17。
とにかく怪我人が出ないプレシーズンになることを願っています。
[Ⅲ]まとめ
例年とは異なり、データ上の変化と話題が多かったので長めの取り扱いとなりました。
基本的にサッカーの内容に関する話はしないようにしているのですが。
「城福浩監督 就任記者会見」を行いました!【前編】
《サンフレッチェ広島 2017年12月22日付》
足立修強化部長
2017年は、非常に苦しいシーズンとなりました。ここにいらっしゃるマスコミの皆さまと、広島県民・市民の皆さまとチームが一丸となり、何とかJ1残留を手にすることができました。J1で戦う来季は、0から新たに出発するという意味で、城福監督を招聘し、もう一度、サンフレッチェらしさを取り戻したいと思っています。
2018年シーズンについてですが、上記のようにゼロベースの戦いとなるようです。
これまで積み上げてきた財産は2016年シーズン・2017年シーズンで使い潰しました。
昨年のサポーターズカンファレンスでも指摘されていた若手のレンタル移籍も変わらず*18。
素晴らしい選手の補強には成功していますが、スペシャルな選手の獲得はなし。
前述したように、苦しい戦いとなると予想しています。
ホーム最終戦で織田社長も仰っていたことですが、何ができなかったのか、何が悪かったのかを検証し、反省し、しっかりと対策を講じていただきたいと思います。
*1:ちなみに、企画の始まった2009年の漢字は「躍」だった。ゆく年くる年:今年の漢字 広島《J's GOALアーカイブ 2009年12月31日付》。
*2:森保 一 監督 退任のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年7月4日付》。
*3:ヤン・ヨンソン監督 就任のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年7月11日付》。
*4:広島・ヨンソン新監督会見「攻撃的なサッカーを目指す」26日ルヴァン杯から指揮《デイリースポーツ 2017年7月14日付》、ヤン・ヨンソン 監督 退任のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年12月4日付》。
*5:城福 浩 監督 就任のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年12月7日付》。
*6:U-20日本代表コーチングスタッフに、横内昭展ヘッドコーチ、下田崇GKコーチ、松本良一フィジカルコーチが就任《サンフレッチェ広島 2017年12月5日付》。
*7:2018シーズン トップチームコーチングスタッフについて《サンフレッチェ広島 2018年1月9日付》。
*8:塩谷司選手 アル・アインFC(UAE)へ完全移籍のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年6月15日付》、ミキッチ選手 来シーズンの契約について《サンフレッチェ広島 2017年11月13日付》。
*9:この表の中で比較すると、90分あたりのシュート数はアンデルソン・ロペスが4.10本で1位。2位はパトリックの3.15本、3位は工藤の2.57本。
*10:なお、スポーツナビの集計データはFootball LABのそれと比較してシュート数が少ないため決定率は少し高くなっている(例えばアンデルソン・ロペスはシュート93本で10.8%)。ただし、他データとの整合性を取るためFootball LABのデータを採用した。
*11:なお、2017年シーズンはFC東京に所属したピーター・ウタカはシュート40本で8ゴールとシュート決定率20.0%を記録した。2016年シーズンは広島に所属してシュート119本で19ゴールとシュート決定率16.0%を記録している。ピーターウタカ 2017 選手データ《Football LAB 2018年1月14日閲覧》。
*12:サンフレッチェ広島 2017トレーニングキャンプ(2次)のご案内《サンフレッチェ広島 2017年1月19日付》。
*13:『トヨタプレミアカップ2016』出場のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年1月19日付》。
*14:2017 Jリーグプレシーズンマッチ in 山口「レノファ山口 vs.サンフレッチェ広島」開催のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年1月25日付》、2005Jリーグプレシーズンマッチ in 岡山 サンフレッチェ広島vs.セレッソ大阪の試合結果について《J’s GOALアーカイブ 2005年2月23日付》。
*15:サンフレッチェ広島 2017トレーニングキャンプ(1次)のご案内《サンフレッチェ広島 2017年1月10日付》、「鹿児島トレーニングキャンプ(1/29~2/12)」スケジュール決定のお知らせ《京都サンガ 2017年1月24日付》、
*16:柴崎晃誠選手の負傷について《サンフレッチェ広島 2017年2月3日付》、佐々木翔選手の手術について《サンフレッチェ広島 2017年2月14日付》、柏好文選手の負傷について《サンフレッチェ広島 2017年2月27日付》。これらの他にプレスリリースはなかったが青山敏弘、アンデルソン・ロペス、林卓人、森﨑和幸も戦列を離れた時期があった。【ライターコラムfrom広島】“源”森崎和幸不在の痛手 苦境脱出は背番号8から学んだことの模索にあり《サッカーキング 2017年4月6日付》。
*17:サンフレッチェ広島 2018シーズン開幕前スケジュールのご案内《サンフレッチェ広島 2017年12月21日付》。
*18:例えば、野津田岳人選手 ベガルタ仙台への期限付き移籍期間延長のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年12月28日付》、宮原和也選手 名古屋グランパスへ期限付き移籍延長のお知らせ《サンフレッチェ広島 2017年12月30日付》。